リチャード・B・チェイニー氏は、米政府内で最も偉大な経歴を重ねた人物の1人だ。あまり評価されていない貢献の一つは、2007年に米軍のイラクへの大規模な増派を推進し、米国をイラク戦争敗北の危機から救ったことだ。11月3日に84歳で死去したチェイニー氏は当時、副大統領として、ジョージ・W・ブッシュ大統領を含むホワイトハウス内の慎重論者を説得した。当時のワシントンでのコンセンサスは、ベトナム戦争の時のような米軍撤退を望むというものだった。有力者で構成された委員会は撤退を勧告した。しかし、デービッド・ペトレイアス将軍やジャック・キーン元将軍らは、周辺地域の脅威の排除と治安維持に必要な対テロ戦略を進めるために、米軍の増派を強く主張していた。