「何をやらないか」を決めているか
その問いで、相手の戦略的思考がわかる

――素早い判断を下すために、宮川さんがよりどころにしている亀山千広プロデューサーの言葉とは何でしょうか。

宮川:2008年から2010年までフジテレビの映画部に出向していたのですが、その時に出会った亀山千広プロデューサーに後に相談したことがあるんです。

 私が「日本映画専門チャンネル」「時代劇専門チャンネル」のブランディングに悩んでいた時期で、「どうすればいいチャンネルになりますか?」と相談したら、亀山さんはこう言ったんです。「宮川さん、何をやるかじゃなくて、何をやらないかを決めたほうがいいよ」と。これは衝撃でしたね。

 人は何かを成し遂げようとするとき、「何をやるか(To Do)」ばかりに目を向けがちです。しかし、本当に重要なのは「何をやらないか(Not To Do)」を明確にすることなんです。

 亀山さんは続けて、「『やるべきこと』を増やしていくと、方針はどんどんブレていく。でも、『やらないこと』を決めれば、やるべきことはおのずと浮かび上がってくる。『踊る大捜査線』もそうだった。ボスのところに集まって事件の経過を説明したりといった、ありきたりなことは一切やらない、と決めたからこそ、あの新しい刑事ドラマが生まれたんだ」と教えてくれました。

日本映画専門チャンネルで
絶対にやらない「人気コンテンツ」とは

宮川:この教えを、私は徹底して実践しています。

 例えば、日本映画専門チャンネルでは、どんなに人気があってもスプラッター映画はやりません。配信と違って、放送は意図せずチャンネルを合わせた人が見てしまう可能性がある。あまりに刺激の強いものは、ある意味“暴力”になりかねない。これも「やらないこと」の一つです。

 また、時代劇の番宣CMを作るときも、「いかにも時代劇」という音楽は使わない、と決めることもあります。その結果、ジャズやクラシックを使った、従来とは違うおしゃれな雰囲気のCMが生まれ、新しい視聴者層にアピールできたんです。