マンション羅針盤#2Photo:PIXTA

知られざるマンション管理・売買の情報を、管理のプロや売買の玄人からなる業界のインサイダー集団が、独自の情報と視点から忖度(そんたく)なしに論じる新連載『マンション羅針盤 管理&売買』。第2回はマンション管理会社勤務経験が長く、管理業界の裏表に精通したマンション管理士の中村優介氏が、すでに全国で広がっている管理会社大撤退時代について解き明かす。あなたのマンションは大丈夫?(フルニール代表・マンション管理士 中村優介)

「管理会社が管理組合を選ぶ時代」を
マンション管理組合はどう生き抜くか

 2018年夏頃から顕著になった、管理業界大手の住友不動産建物サービス(略称「建サ」)が、不採算・過剰要求といった問題を抱える管理組合に対して解約を申し入れ波紋を広げた、通称「建サショック」。

「リプレイス」といえば一般的に、管理組合側から管理会社に対して行うものとされています。管理会社側から管理組合を「切る」などということはまずあり得ないというのが常識だったため、18年当時は業界内では大きな話題となりました。

 その後、他の大手管理会社も「建サに続け」と言わんばかりに、管理組合をリプレイスしはじめました。委託費が安く不採算な管理組合に対する値上げ要求や、過剰要求を繰り返す管理組合に対する解約申し入れを行うようになったのです。この中には非現実的な値上げ要求を行い組合側から解約してもらう、事実上の解約申し入れも含まれます。

 また、契約外であっても管理会社が管理組合に対して無償で行っていたサービスも、「今後はやりません」と断られるようになりました。自社標準仕様から外れるイレギュラー対応は拒否されることが当たり前になりました。

 管理組合から管理会社への「カスハラ」などはもはや論外。そのような区分所有者を野放しにするとあっという間に理事長宛ての解約予告通知が届きますから、こういったカスハラ居住者への対応も管理組合側で考えなければなりません。

 一昔前までは全く正反対の景色が広がっていました。相見積もりを取れば管理委託費は安くなり、管理会社に要求すれば何でもやってくれた平成デフレ時代。そんな時代はとうに過ぎ去り、継続して手厚いサービスを受けるためにはその分しっかり対価を支払わなければならない時代が到来しているのです。

 こうした「管理会社大撤退時代」を、マンションの管理組合はどのように生き抜けばいいのでしょうか。立場が逆転している中、突然契約中の管理会社に撤退される悲劇はどう避けられるのか。そもそも、どんな管理組合が「リプレイス」されやすいのか、対策はどうすればいいのか。仮に撤退を突きつけられたら、すぐすべきこととは何か。次ページから具体的対策とともにお伝えしていきましょう。