マンション羅針盤 管理&売買#3Photo:PIXTA

マンションの修繕工事費の値上がりの悪玉とされている談合問題。実はそれだけではない、深い理由があった。連載『マンション羅針盤』の第3回では、マンション管理業界の経験が長い筆者が、知られざる理由を解き明かす。(フルニール代表・マンション管理士 中村優介)

談合だけが修繕工事費値上がりの原因じゃない
あまり語られない三つの理由とは

 2025年は、マンションの大規模修繕工事を巡り「激震」が走った年になりました。

 3月、公正取引委員会が、独占禁止法違反(不当な取引制限。いわゆる「談合問題」)の疑いがあるとして工事施工会社約20社に立ち入り検査を行い、翌月には追加検査でその数は30社に拡大したとの報道がなされました。

 6月には大規模修繕工事施工会社の社員2人が、住民になりすましてマンションの大規模修繕委員会に参加し、会社に利益誘導を図ったとして、住居侵入容疑で逮捕されるという事件が発生しました。これらの事件を受け、大規模修繕工事を検討中のマンション管理組合には施工会社の選定をストップせざるを得なくなるところも多発し、甚大な影響が出ています。

 二つの事件は、マスコミにも大きく取り上げられ、連日多くの媒体で繰り返し報道されました。「修繕積立金が不正に狙われている」「ぼったくり」「適正価格より3割増し」――。いかにもセンセーショナルで大衆受けの良さそうな見出しが紙面に躍ったのをご記憶の方も多いでしょう。

 一方、マンション管理の現場では「管理会社の日常修繕工事の見積金額が高騰している」という問題が広がりつつあります。この問題は、くだんの二つのセンセーショナルな事件としばしばリンクして「管理会社が談合でぼったくっているからだ」などと報道されがちです。

 しかし、工事業者間での談合問題やそれを狙って管理組合に業者がなりすまし要員を送りこむ、ということと、修繕工事費の値上がりは本質的には全く別の話なのです。

 私はマンション管理会社での勤務後、マンション管理士として独立し長年マンション管理業界に携わってきました。この経験を元に、しばしば一緒くたに語られがちな「談合」と「管理会社が行う修繕工事費の高騰問題」について、整理してみようと思います。結局のところ、三つの理由が高騰を招いていることがわかります。一つは管理組合自身が原因です。中には対処が難しいものがありますが、管理組合ができることもあります。その対処法も含めて次ページから解説していきましょう。