それは本当にやりたいこと?
やらなくていいことを見極める

 そんなタイミングで出会ったもう1冊の本が、『やらない決意』です。そこには「意志エネルギー」があるという考え方が紹介されていました。何でもかんでもやろうとすると、このエネルギーはどんどん消耗してしまいます。

「やらないことを決める」ことの大切さを実感した私は、「やりたいことリスト」と「やらないことリスト」をセットでつくるようになったのです。これは、私の時間感覚を根本から変える大きな転機になりました。

 やりたいことリストをつくるときは、紙に「自分が本当にやりたいこと」や「情熱が湧くこと」を書き出していきます。「これができたら最高だと思える仕事は何か?」「いま、本当に達成したい目標は何か?」といった質問を自分に投げかけながら、自分のなかから湧いてくる言葉をそのまま書きとめていきます。

 たとえば私であれば、「会社の新規事業の立ち上げ」「家族との旅行」「読書や学びの時間」など。ここで重要なのは、誰かの期待に応えるためではなく、自分自身が心からやりたいと思えることを書き出すことです。

 一方、やらないことリストは、「時間を奪っているのに価値を生み出していないこと」を書き出すのに使います。「ほかの人に任せられることはないか?」「惰性で続けているけれど、じつは必要ないことは何か?」と問いながら、自分のなかの“やめていいこと”を可視化していきます。

「形式的な会議への参加」「重要度の低いメール返信」「SNSやニュースをだらだら見る時間」「苦手な業務の手作業」など。頭では「やめたい」と思っていても、習慣になっているとなかなか難しいものです。だからこそ、明確に「やらないこと」としてリスト化することで、自分自身に対しても「これはやらなくていい」と言うことができるようになります。

 このとき、「やりたいことリスト」を先につくることがポイントです。やらないことから考え始めてしまうと、単なる我慢のリストになってしまうからです。「やりたいこと」が明確になっていれば、それを実現するために「やらないこと」を決めるという、前向きな選択に変えることができます。