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亡くなった夫の思い出話をしているとき、突然遺品が反応した…。夫に先立たれた妻たちは、ときに信じられないような体験をするのだという。自身も夫をがんで亡くしている筆者が、2人の女性から聞いた不思議な出来事とは。※本稿は、ジャーナリストの河合真美江『喪の旅 愛しい人に出会い直す』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
市民ランナーだった夫への
「余命数カ月」の宣告
走るのが好きで好きでたまらない。夫は市民ランナーだった。フルマラソンの自己ベストは2時間36分48秒。山野のトレイルランニングも走った。
変調の兆しは2016年8月、リオデジャネイロ五輪のさなか。横浜市の作原薫さん(53)の夫、圭介さんは背中やおなかが痛いとこぼした。
9月15日の朝、ひどい腹痛で病院へ。検査入院した。膵臓(すいぞう)がんで、転移もあった。「治療は難しい。残り時間は月単位」と告げられた。
病院ロビーの丸テーブル席に、手を握り合って座った。夫は、大学2年だった一人息子のことをまず口にした。
「僕に何かあっても、大学の心配はさせないで。なんとかなるから。ごめんな」
いつもと変わらぬ声で、保険や退職金の話をした。「そんなに早く死なないでよ」。薫さんは冗談めかして言った。
自宅での緩和ケアを勧められ、帰宅したものの急変。10月1日の朝、病院で息をひきとった。54歳だった。
最期と悟った時、薫さんは夫の耳元で「どのシューズがいい?」と尋ねた。「ブルーの……」。確かにそう答えた。おしまいの一言だった。
ブルーの線が入った白いランニングシューズを柩に入れた。これで、どこまでも走っていけるね――。







