笑顔のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

指示されたらすぐに着手し、効率よく仕事を終わらせる人がいる。彼ら「前倒し派」は、ビジネスの現場でも「デキる人」と評価されるイメージがあるが、一概にはそうとも言い切れない。「前倒し派」は、どんな思考プロセスで仕事に取り組んでいるのか、心理学者が解説する。※本稿は、安達未来『締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか 「先延ばし」と「前倒し」の心理学』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

「前倒し派」の
共通点とは?

 前倒しについての研究が重ねられるうちに、前倒しをしやすい人というのは、異なるタスクや状況においても一貫して前倒しをしやすい傾向にある、という見解が現れはじめました。前倒しをしやすい人、しにくい人という個人差があるという見解です。

 ただ、前倒ししやすい人のパーソナリティについては、現在もさまざまな研究が行われている最中で、先延ばしのそれに比べると知見が十分に蓄積されているとはいえません。なかには、一貫した主張になっていない知見もあります。そのため、現時点では「○○な人が前倒ししやすい」と明確に断定することはできないということを念頭に置いて読んでいただければと思います。

 最初に検討された前倒しの原因は、ワーキングメモリの違いでした。ワーキングメモリとは、必要な情報を一時的に保持したり処理したりするための脳の機能を指し、日本語では「作業記憶」といわれます。もともとはコンピュータのメモリの働きに使われていた言葉ですが、人の一時的な記憶機能にも使われるようになりました。