人を動かす最強の原動力は「情熱」と「必要性」
101歳、現役の化粧品販売員として活躍している堀野智子(トモコ)さん。累計売上高は約1億3000万円で、「最高齢のビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されたキャリア61年のトモコさんが、年をとるほど働くのが楽しくなる50の知恵を初公開した話題の書『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が「堀野氏の技法は、ヒュミント(人間による情報収集活動)にも応用できる」と絶賛(日刊ゲンダイ・週末オススメ本ミシュラン)する世界一の先輩による“人生訓”は、アナタの疲れた心も元気にしてくれる!

【即断即決の力】偶然の出会いから夢をつかんだ主婦が教える「行動する勇気」Photo: Adobe Stock

夢中で掴んだ、仕事への切符

外出したときにばったり会った友人のご主人が、「ポーラ化粧品の営業所を始めた」と聞いたとき、「私、その仕事、前からやりたいと思ってたの。私にもやらせて!」と即断即決、その場でお願いしたんです。

「じゃあ、今から一緒に営業所へ行ってみる?」と、その友人に誘われるまま、営業所へと向かい、そのままショップオーナーのご主人の話を聞きました。

その帰りにはポーラ化粧品のブランドロゴ入りのカバンに基礎化粧品をぎっしり詰めて、販売するための伝票もたくさんもらってきました。ずっとやりたかった仕事なので、うれしくてたまらず、カバンの重さなどまったく気になりませんでした。

希望の重さを抱いて、夫への宣言

その夜、仕事から帰宅した主人に「私、これからポーラ化粧品のセールスをやることにしたのよ」と宣言したんです。

すると主人には、「別にやるのはかまわないけど、俺の知り合いのところには行くなよ」とくぎを刺されました。

“昔人間”なりの、ささやかな理解
「働くな」と言えなかった、家の実情

主人は大正生まれの“昔人間”ですが、妻である私が働くことに関して「体裁が悪い」とか「仕事なんかするな」と言わなかったことは、よかったように思います。

主人は比較的裕福な家庭に生まれたこともあり、気前よく部下におごってしまう人でした。比較的高収入であったにもかかわらず、家庭に満足に生活費を入れなかったので、私が働くしかない生活を送ってきたのです。

だから、「働くな」などと言えた義理ではなかったというのもあるでしょうね。

【解説】1.チャンスを掴む「即断即決」の力

このエピソードには、ビジネスパーソンが学ぶべき、キャリアを切り開くための重要なヒントが詰まっています。

著者のトモコさんは、「やりたい」と日頃から思っていた仕事の話を耳にするやいなや、その場で「私にもやらせてほしい」と直訴しています。

ビジネスの世界では、チャンスは準備が整った人の前にだけ現れるとは限りません。「いつかやろう」ではなく、アンテナを張り続け、いざという時にためらわず手を挙げる行動力と決断スピードこそが、道を切り開く第一歩であることを示しています。

2.人を動かす「情熱」と「必要性」

「カバンの重さを感じなかった」という描写は、「好き」という情熱(内発的動機)の強さを物語っています。

しかし、それ以上に注目すべきは、「私が働くしかない」という切実な「必要性(外発的動機)」です。この両輪が揃った時、人は「体裁が悪い」といった周囲の抵抗や旧来の価値観(“昔人間”の夫)といった逆境をも乗り越える、強力な推進力を得ることができます。

著者の行動は、環境や他人の理解を待つのではなく、自らの情熱と覚悟によって未来を掴み取ることの重要性を教えてくれます。

※本稿は、『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。