特に、知的財産法やIT関連法務といった分野では、技術と法律の両方に精通した人材は極めて希少であり、高い需要があります。彼らが持つ技術的な知見は、AI関連の紛争やデータプライバシーの問題など、今後ますます増加するであろう新たな法的課題に対応する上で、強力な武器となるでしょう。
しかし、現状の法曹養成制度では、弁護士になるまでに5年も6年もかかるとなると、多忙なエンジニアの方々がキャリアチェンジを決断するのは非常に困難です。
だからこそ、より短期間で、より柔軟に法曹資格を取得できるような制度設計が求められるのです。
セカンドキャリアでの
ロースクール通いは非現実的
私の身内に、東京大学でAI研究をしている松尾研究室でPh.D.(編集部注/博士号)を取得し、今はスタートアップ企業の経営者をやっている者がいますが、そばで見ていると、やはりAIのエンジニアも30歳くらいまでが概ね旬のようです。スポーツ選手と同じイメージですね。
アメリカだったら、次のキャリアとして、法曹になるためにロースクールに行く、医者になるためにメディカルスクールに行く、あるいはビジネススクールに行くという選択肢があります。
こうなれば、きっと弁護士の供給も増えるはずです。
現代社会は、あらゆるものがデジタル化され、データが価値を生む時代です。企業活動においては、無形の資産、例えば知的財産権やデータ、ブランド、ノウハウといったものの重要性がますます高まっています。
こうした無形価値の創造や保護、活用においては、法的な知識、すなわち「リーガル・リテラシー」が不可欠です。
プログラミングが、ある種のルールに基づいて情報を処理し、価値を生み出す行為であるとすれば、法律もまた、社会のルールに基づいて権利関係を明確にし、紛争を予防・解決することで、社会全体の安定と発展に貢献するものです。
この2つは、構造的に非常に似ていると私は考えています。
デジタル化が進めば進むほど、事業活動、社会活動のあらゆる場面で、何らかの「リーガル・リテラシー」が求められるようになります。そうした時代において、法律の専門家である弁護士が、デジタル技術に対する深い理解と活用能力を身につけることは、もはや当然の要請と言えるでしょう。
そして両者の思考構造が似ている点で、ハードルは低いはずです。







