「迷惑な撮り鉄を見たことがあるか」
アンケートでわかったこと

 2025年5月、小田急電鉄の男性駅員が、JR総武線の線路内に無断で立ち入り、走行中の試運転電車を緊急停止させていたことが判明しました。なんとこの駅員も「撮り鉄」。駅員のアルバイト中に、レアな車両を撮影する目的で線路に侵入することを認めたと言います。男性駅員はその後、退職願を提出したのだとか。他社にまで迷惑をかけるのは言語道断です。

 こうした撮り鉄の迷惑行為は枚挙にいとまがありません。そんなニュースを目にして、世間の人は「撮り鉄」に対するネガティブなイメージを持つようになりました。

 それほどまでに「撮り鉄」はマナー違反を繰り返しているのか。実態を探るために、鉄道トレンド総研が調査を行いました。「迷惑な撮り鉄を見たことがありますか」という質問に「ある」と回答したのは29.8%という結果。3割に満たないことがわかりました。つまり、迷惑行為を働いている人は一部の人になります。

 悪いニュースはどうしても目立ってしまい、「撮り鉄は悪いもの」とひとくくりにされてしまいがちですが、実際は、マナーを守って楽しんでいるファンが多数。一部の撮り鉄たちの悪行ですべての撮り鉄が悪者にされてしまうのは、とても残念なことです。

撮り鉄が増えて
トラブルが目立つ理由とは

 そもそもなぜ撮り鉄が増え、トラブルが目立っているのでしょうか。2つの背景があると私は考えます。

 1つは、スマートフォンや高性能なデジタルカメラの普及により、誰もが手軽に鉄道の撮影ができるようになったこと。昔と違い、高性能のカメラを手に入れなくても、いつでもどこでも好きな車両が撮れるようになりました。鉄道ファンでなくても、旅行に行った記録として、乗った車両を撮っておく人も少なくないでしょう。

 もう一つは、SNSによる承認欲求の刺激です。 撮影した写真をSNSで手軽に共有できるため、「人よりも良い写真を撮りたい」という競争意識や、「いいね」を得たいという承認欲求がエスカレートしやすい環境になります。それが危険な場所への立ち入りやマナー無視といった行為につながっていると考えます。

撮り鉄らしき男性が
突然バックステップをしてきて衝突

 実際に、撮り鉄とのトラブルを経験した人もいます。20代男性のAさんはこう振り返ります。

「ある日、ホームで電車を待っていると、撮り鉄らしき男性がカメラを構えて何かを待っていました。30代くらいで、大きなリュックを背負っていました。私はその後ろ辺りにいたのですが、その人は、カメラを構えたまま突然バックステップをして、私の方に近づいてきました。そして、思い切りぶつかってきました」