「トランプ錯乱症候群(TDS)」は実在するのだろうか。真面目なメンタルヘルス専門家が、そのような党派的で名誉毀損(きそん)に当たるような診断を下すことはない。だが筆者は自身の心理療法診療所で、この症候群を目にしてきた。あらゆる政治的立場の患者たちが、政策について議論するためではなく、強迫観念や憤激、恐怖に対処するために、ドナルド・トランプ米大統領の存在を治療の場に持ち込んできた。彼らの苦悩はイデオロギー的なものではなく、症状的なものだ。臨床的には、その症状は不安障害や強迫性障害の症状と一致する。絶えず脳裏に侵入してくる思考や、感情調節異常、機能障害だ。患者らは、夜眠れず、ニュースをチェックせずにはいられず、身体的な興奮があると訴える。多くの患者が、トランプ氏のことを考えるのをやめようとしてもやめられないと打ち明ける。彼らはトランプ氏の一挙手一投足を、民主主義への脅威、自分たちの安全や支配に対する脅威と受け止める。