「ある農家の倉庫では、ドアを壊すのではなく、そっと開けて静かに入った。それで冷蔵庫まで一目散です。中に食料があることをすでに学習しているんですね。人間の手のにおいをたどっているのでしょうが、冷蔵庫の取っ手の位置もわかっていたようです」
ツキノワグマの前脚 撮影:風来堂
「同じ家に1日2回侵入した例もあり、2回目には、冷蔵庫の扉にかけた鍵を壊してまで中の米を食べたそうです。もはや人を恐れていない。まるで、単なる盗み食いをするような“こそ泥”から、人がいても堂々と犯罪を犯してしまう“凶悪犯”になった。そんなイメージですね」(山内准教授)
クマが家に入ってくる――そんな状況を想像するだけでも恐ろしいが、実際にはどう行動すべきなのだろうか。
もしクマと家の中で
鉢合わせしてしまったら
「クマが家に入ってきたら? 腰抜かすしかねぇよ。どうにもできねぇ」
そう話すのは、群馬県奥利根で40年にわたりクマを追ってきた猟師・高柳盛芳さん(通称モリさん)だ。長年、山の中で数々のクマと対峙(たいじ)してきたモリさんでさえ、家に入ってくるクマにはお手上げだ。
「家に入ってくるクマ、あれは異常だよな。超異常。ありえねえよ、普通は。今まで聞いたことない。ほうきや掃除機で叩こうなんて考えちゃダメだよ。やられる方が早い。……あ、一つだけ勝てる方法があるな。じゃんけんだよ。ヤツらはパーしか出せねぇから、チョキ出せば勝てるんだ(笑)」
モリさんの冗談が、かえって“どうにもならない現実”を浮き彫りにしているようで余計に怖い。







