慌てず静かに後ずさり
別の部屋に移りクマの視界から外れる
もし家の中でクマと鉢合わせたら、モリさんの言葉通り、人間にできることはおそらくほとんどないだろう。そんな中で、唯一といっていいほど重要なのが「興奮させないこと」だ。
「大声を出したり、慌てて動いたりするのは絶対に避けてください。クマは非常に臆病で警戒心の強い動物がゆえ、刺激を与えたりすると、パニック状態になって襲ってくる可能性が高い。慌てず、声を出さず、静かに、ゆっくり後ずさりする――。それがもっとも安全な行動です」と山内准教授は強調する。
距離をとりながら別の部屋に移動し、クマの視界から外れるのが望ましい。実際、岩手県内では、1階にクマが侵入した際、2階に避難してやり過ごした事例もある。さらに、外に出られる状況であれば、静かに屋外へ避難するのがベストだ。なるべくクマに気配をさとられないように。
クマに狙われやすい家と
そうでない家がある
「クマの対策は、人間社会での防犯と同じです。狙われやすい家と、そうでない家がある。草ぼうぼうで何も管理していない家は、やっぱり入りやすいんです」(山内准教授)
外で犬を飼っている家庭では、「番犬」としての安心感をもつ人も多い。しかし、実際には過信は禁物だ。
「昔のマタギ犬のようにクマに立ち向かう犬なら効果がありますが、今の飼い犬はおとなしい。レトリバーなんかは、泥棒が来ても尻尾を振って遊ぼうとするくらいです。訓練された犬でなければ、逆に襲われる危険もあります」(山内准教授)
高柳さんと愛犬パル。猟犬として育てるためにはクマの臭いを覚えさせる必要がある 撮影:高柳盛芳
ここ最近も、飼い犬がクマに連れ去られた事例も複数起こっており、「犬は室内に入れるべき」との警告も耳にする。







