他社との仕事がなぜか進まない。相手の動きが鈍く、熱量も続かない。そんな事態を避けるために、仕事ができる人が避けていることがあります。それは、いきなり“取引関係”を迫ること。それでは、相手の自由度が失われ、共創の芽がしぼんでしまいます。仕事ができる人は、まずは“ゆるいつながり”で、同じ景色を見るところからスタートさせます。
では、どうすればその関係性を作れるのか? 400以上のチームを支援してきた組織開発の専門家が、「誰とでもうまく仕事を進められる人」がやっていることをまとめた書籍『チームプレーの天才』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)から、そのコツを紹介します。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
社外の仕事仲間の「やる気」を奪う行為
共創活動は多分に「やってみないとわからない」「目に見えにくい」無形の価値や文化を創出する所作を伴います。
社外の人たちとプロジェクトや事業を進める際、「つながり方」「契約の仕方」なども柔軟性をもって対応していきたいところです。
いきなり重厚な契約の締結を要求する企業もありますが、取引の関係では進みにくい場合もあります。
「乙は甲への成果物を期日までに報告書とともに納品し、甲は期日までに検収を行うこと」などと言われると、なんとも動きにくい面も。
また従来の契約形態では、発注者と受注者、元請けと下請けの関係になりがちです。
大組織であれば契約の締結に時間もかかり、それが相手の共創の動機を削ぎがちです。
従来の商慣習や契約形態にも多様性を求めて、いきなり取引の関係から始めないスタイルや、ライトに対価を支払える方法も模索したいところです。
「ゆるいつながり」から始める
そこで注目したいのが「コミュニティ」です。
数年前にバズワード的に普及したコミュニティという概念は、いまや普遍的な場として定着しました。
近年も様々なコミュニティが立ち上がり、参加者同士が取引関係のない状態で、あるいは取引の前段階の関係構築を行う場として機能しています。
コミュニティそのものが様々なステークホルダーが集う共創の場でもあり、活用しない手はありません。
地域コミュニティ、業界コミュニティ、読書会コミュニティ、あるいは企業内の社内コミュニティなど、バリエーションも豊富です。
私も「あいしずHR」(愛知県豊橋市)や「越境学習の聖地・浜松(ハマエツ)」(静岡県浜松市)など、地域×組織開発、地域×学びのコミュニティを複数運営しています。
コミュニティ活動が初期の接点となり、そこから取引の関係で仕事をするようになった企業もありますし、スピンオフで別の共創活動も多数生まれています。
「契約」を超えた「つながり」をつくるために
いきなり社外の人たちとのコミュニティをつくるのはハードルが高ければ、まずは社内コミュニティ(オンラインコミュニティも要検討)から立ち上げて、参画してもらうのもいいでしょう。
または、すでにある社外コミュニティにあなた(たち)が参画してみることも検討してみましょう。
そうして、他者や他社との取引関係ではない世界に小さく「越境」してみる。
仲間(チームメンバーや他社の協力者たち)と同じ景色を一緒に見る、体験する。
その機会をぜひつくってみてください。
そこから「共創は楽しい」「もっと共創したい」と意欲を高める人もいます。
(本稿は、書籍『チームプレーの天才』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、他者との仕事をラクにする具体的な93の技術を紹介しています)
■書籍のご紹介
誰とでもうまく仕事を進められる人は、
何をしているのか?
「他者」との仕事が
驚くほどラクになるコツ!!
発売たちまち、「読者からの声」が続々と届いています!
この本は、現代の複雑なビジネス環境において他者との協力に課題を感じている方におすすめの本です。
プロジェクトを進めていく上で忘れてはいけないことを示してくれる本でした。
チームメンバーにも本書を勧めて、より成果を出すチームにしていきたいと感じました。
仕事をしていくうえで不可欠な人とのかかわり方についても良い気づきが得られる本
チームで成果を出したい人はもちろん、人間関係に悩んでいる人にも刺さる内容です。

「ひとり」で頑張るのはしんどい。
でも、「他者」と協力するのも億劫……。
本書は、そんな葛藤を抱える人のための本です。
近年、チームで成果を出すよう求められるシーンが増えてきました。変化の激しい時代において、自分たちの専門性や意欲だけでは、ひいては従来の「勝ちパターン」では答えを出すことができない。よって他者と協力して答えや結果を出すやり方にシフトする。その流れは必然とも言えます。
チームの仲間、社外の取引先、そして、これまで関係のなかった未知なる仲間たち。幅広く他者と手を組み、いままでとは異なる答えを出す。それができない組織や人は、イノベーションはおろか現状維持さえも厳しいでしょう。
その時代の流れの中で、脚光を浴び始めたある言葉があります。
「共創」です。
共に創ると書いて、共創。この言葉をビジョンやスローガンに掲げる企業が増えてきました。
一方で、共創は「言うは易く行うは難し」の典型。なかなか思うようには進みません。「共創できるチーム、組織にしていきたい。しかし、うまくいかない……」。企業の経営者や部門長、地方自治体の長などから、このような相談を、本書の著者たちは日々受けています。
そんな人たちに向けて、他者と「共創」関係になり、一緒に結果を出すための方法を伝えるのが本書です。組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さんが、これまで400以上の組織やチームを見てきたなかで気づいた「他者と協力して結果を出せる人たちがやっていること」を、具体的な93のコツとして紹介します。
リーダーやマネジャーにかぎらず、いちメンバーでも実践できる内容です。ひとつでも実践してもらえれば、仕事仲間とのコミュニケーションが変わり、関係性が変わり、結果も変わってくるでしょう。
他者と協力して仕事の結果を出したい人にとって、具体的な学びの多い一冊です。
本書はこんな人におすすめです
「社内でチームの一員として仕事している」
「部署横断プロジェクトのメンバーに選ばれた」
「取引先や協力会社など社外の人と仕事をしている」
「社外でイベントやコミュニティの運営に関わっている」
「地域や行政などと協力する必要がある」
本書はこんな悩みを解決します
「意見が食い違ってぶつかってしまう……」
「経験や価値観がバラバラでまとまらない……」
「意欲を持って取り組んでもらえない……」
「お金を払っているのに、ちゃんとやってくれない……」
「前進している手応えを感じられない……」
仲間と協力し合うための93のコツを紹介!!
第1章 「ゴールイメージ」を合わせるーー見ている「景色」がバラバラになっていないか?
第2章 「動機」に寄り添うーー自分たちの都合ややり方を押し付けていないか?
第3章 「ストーリー」を描くーー自分たちだけで盛り上がって「孤立」していないか?
第4章 「体験」を創るーー「本当にできるの?」と不安になっていないか?
第5章 「振り返り」を習慣にするーー「勉強になった」「大変だった」で終わりにしていないか?
第6章 「余白」を大切にするーーいつも「成果」を出すことに追われていないか?
第7章 「能力」を補うーーいまのメンバーのままで走りきれるだろうか?
第8章 「キャリア」のイメージをもつーー自分やメンバーの「その後」を描けているか?
第9章 「変化・成長」を実感するーー目先の評価に惑わされて「成長」を見過ごしていないか?
■著者プロフィール
沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問(組織開発&ワークスタイル変革)。あまねキャリア株式会社CEO/一般社団法人ダム際ワーキング協会代表。プロティアン・キャリア協会アンバサダー。磐田市"学び×共創”アンバサダー。『越境学習の聖地・浜松』『あいしずHR』『読書ワーケーション』主宰。大手自動車会社、NTT データなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。主な著書は『組織の体質を現場から変える100の方法』(ダイヤモンド社)、『新時代を生き抜く越境思考』『EXジャーニー』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の問題地図』(いずれも技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など。趣味はダムめぐり。#ダム際ワーキング 推進者。
下總良則(しもうさ・よしのり)
東北工業大学准教授(デザイン経営分野)/usadesign代表/一般社団法人 デザイン経営研究所 代表理事/一般社団法人RAC理事。多摩美術大学を卒業後、商品企画担当者・プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーを経て、usadesignとして独立。フリーランスデザイナーとして、世界シェア第3位の広告代理店ピュブリシス傘下ビーコンコミュニケーションズや、ネクストユニコーンをはじめとするスタートアップ企業にジョインし、「デザインと経営学」をテーマに活動を広げる。ニューヨークで伝統ある国際グラフィックデザインアワード「Graphis Design Award」にて2023年に金賞を受賞し、ロゴ部門単独では世界第2位、日本からのエントリーの中では第1位を獲得。このほか、日本高等教育開発協会が審査した「コロナ禍でのICTを活用した新しい授業公募」にて、唯一の審査会全会一致事例として最優秀事例に採択され、日本の私立大学の中で第1位を獲得するなど、受賞多数。グロービス経営大学院修了MBA取得。著書に『インサイトブースト 経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本』(ハガツサ)がある。