「仲間に好かれるリーダーがメンバーに“問いかけていること”があります」
そう語るのは、組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さん。400以上の組織やチームを見てきた専門家のお二人は、チームで行う仕事をうまく進められる人たちが「共通してやっていること」を言語化しました。そのなかから、仲間と協力して結果を出すコツを紹介します。※この記事は書籍『チームプレーの天才』(沢渡あまね・下總良則著、ダイヤモンド社刊)の一部を抜粋・編集したものです。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
チームの「熱量」を低下させてしまうこと
自分たちでビジョンを「創る」場合は、各メンバーにとっての意義を確認することで、全員または多数が共感・納得するビジョンを創りあげていきます。
難しいのが、すでに決められたビジョンを「与えられる」パターンです。
ともすれば、メンバーがビジョンを自分ごと化しにくく、他人事感ややらされ感が増長され、熱量の低下、活動そのものの自己目的化や形骸化が起こります。
そうならないためには、チームと(関わる)個の接点を見いだしましょう。
接点を見つけるための「問い」
接点とは、チームの命題や関心(ビジョンもその一つ)と、個人の生きるテーマなどが重なり合う部分を指します。
そのビジョンやテーマ、あるいは活動に対して以下のような問いをチームに投げかけ、メンバーと一緒に考えます。
「なぜ自分(メンバー)が関わるのか」
「どこに面白味ややりがいを見つけられそうか」
「どのようなスタンスで向き合うか」
「そのチームの活動を通じて、どう自分が成長できそうか(あるいはどんな利益が得られそうか)」
チームやプロジェクトが発足するキックオフミーティングなどでメンバー同士の相互理解も兼ねて、個人ワークとグループワークを組み合わせた形式で行うのもいいでしょう。
チームやプロジェクトのメンバーのみならず、関係する人たち、たとえば他部署や社外のビジネスパートナーなどと一緒に行うのもありです。
ワークを通じてお互いの強みや、そのチームやテーマへの関わり方を知ることができますし、それにより、誰にどんなシーンで何を期待できそうかがわかるようになります。
接点を見つけるのに役立つ「フレームワーク」
チーム(組織)と個人の接合部分を見いだす際に役立つフレームワーク(枠組み)の一つが「Will/Must/Can」です。
それぞれ和訳すると、「やりたいこと・ありたい姿」「しなければならないこと」「できること」です。
その活動に対してポジティブな面が思いつかないときは、各々の立場でその活動に対する「Will/Must/Can」を言葉にしてみましょう。
大川陽介さん(株式会社ローンディール)の著書『WILL 「キャリアの羅針盤」の見つけ方』に掲載されている「6Packモデル」も参考になります。
同書では「Will/Must/Can」の洗い出し方についても詳しく解説されていますので、ぜひ読んでみてください。
リーダーは「答え」を急いではいけない
とはいえ、普段から主体的に仕事に向き合っていたり、キャリアのことを考えていたりする人はさておき、そうでない人たちにいきなり「あなたのWillは?」「Canは?」と問うてもポカンとされることが多々あります。
「仕事とは指示どおりの作業をこなすことである」と考えている人は、いきなり「思いを持て」「思いを語れ」と言われても戸惑ってしまうでしょう。なぜなら、そのような生き方、働き方をしたことがないのですから。
グループワークなどをやってみても、うまくいかない。本人たちもなかなかピンとこないようであれば、場やタイミングを改めましょう。
すぐに答えを出そうとせず、まずはチームでの活動や体験を増やしてみてください。
徐々に自分の思いを言葉にできるようになっていくことでしょう。
(本稿は、書籍『チームプレーの天才』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では、他者とうまく仕事を進めるための具体的な93の技術を紹介しています)
■書籍のご紹介
誰とでもうまく仕事を進められる人は、
何をしているのか?
「他者」と働く
すべての悩みが消える!!
発売たちまち、「読者からの声」が続々と届いています!
この本は、現代の複雑なビジネス環境において他者との協力に課題を感じている方におすすめの本です。
誰とでもうまく仕事を進めるための考え方や、プロジェクトを進めていく上で忘れてはいけないことを示してくれる本でした。
チームのリーダーだけでなく、チームビジネスに関わる全ての人が読むべき内容です!
チームメンバーにも本書を勧めて、より成果を出すチームにしていきたいと感じました。

「ひとり」で頑張るのはしんどい。
でも、「他者」と協力するのも億劫……。
本書は、そんな葛藤を抱える人のための本です。
近年、チームで成果を出すよう求められるシーンが増えてきました。変化の激しい時代において、自分たちの専門性や意欲だけでは、ひいては従来の「勝ちパターン」では答えを出すことができない。よって他者と協力して答えや結果を出すやり方にシフトする。その流れは必然とも言えます。
チームの仲間、社外の取引先、そして、これまで関係のなかった未知なる仲間たち。幅広く他者と手を組み、いままでとは異なる答えを出す。それができない組織や人は、イノベーションはおろか現状維持さえも厳しいでしょう。
その時代の流れの中で、脚光を浴び始めたある言葉があります。
「共創」です。
共に創ると書いて、共創。この言葉をビジョンやスローガンに掲げる企業が増えてきました。
一方で、共創は「言うは易く行うは難し」の典型。なかなか思うようには進みません。「共創できるチーム、組織にしていきたい。しかし、うまくいかない……」。企業の経営者や部門長、地方自治体の長などから、このような相談を、本書の著者たちは日々受けています。
そんな人たちに向けて、他者と「共創」関係になり、一緒に結果を出すための方法を伝えるのが本書です。組織開発の専門家である沢渡あまねさんと、デザイン経営の研究者・実務家である下總良則さんが、これまで400以上の組織やチームを見てきたなかで気づいた「他者と協力して結果を出せる人たちがやっていること」を、具体的な93のコツとして紹介します。
リーダーやマネジャーにかぎらず、いちメンバーでも実践できる内容です。ひとつでも実践してもらえれば、仕事仲間とのコミュニケーションが変わり、関係性が変わり、結果も変わってくるでしょう。
他者と協力して仕事の結果を出したい人にとって、具体的な学びの多い一冊です。
本書はこんな人におすすめです
「社内でチームの一員として仕事している」
「部署横断プロジェクトのメンバーに選ばれた」
「取引先や協力会社など社外の人と仕事をしている」
「社外でイベントやコミュニティの運営に関わっている」
「地域や行政などと協力する必要がある」
本書はこんな悩みを解決します
「意見が食い違ってぶつかってしまう……」
「経験や価値観がバラバラでまとまらない……」
「意欲を持って取り組んでもらえない……」
「お金を払っているのに、ちゃんとやってくれない……」
「前進している手応えを感じられない……」
結果を出す「チームマネジメント」のコツを紹介!!
「3方向地図」を描いてみる/「未来のプレスリリース」を書いてみる/様々な「関わり方」を許容する/「ゲスト」を呼んで外との交流をつくる/「できないこと」を開示して、わかり合う/ 「3つのストーリー」を大事にする/チームの「コンセプト」をブランディングする/「5つの着眼点」で伝え方を考える/2割の「動かない人たち」に振り回されない/「偶然の出会い」を誘発する/1人よりも「みんな」で体験する/ハンドルを「握る」「手離す」体験を創る/「振り返り方」を設計する /「意外な発見」を言語化する/「成果」をすぐに求めない/余白を通常業務に「ビルトイン」する /「遊んでいる」と思われないようにする/4つの「役割」をチームにアサインする/「優秀な事務方」をアサインする/「中の人」「外の人」「さすらいの旅人」を加える/「公式」と「非公式」な学びを組み合わせる/関わる人たちの「次のステップ」「近未来」を描く/「意外な収穫」に名前を付ける/「収益貢献」への実感をもつようにする/小さく褒め合う……
『チームプレーの天才』目次
第1章 「ゴールイメージ」を合わせるーー見ている「景色」がバラバラになっていないか?
第2章 「動機」に寄り添うーー自分たちの都合ややり方を押し付けていないか?
第3章 「ストーリー」を描くーー自分たちだけで盛り上がって「孤立」していないか?
第4章 「体験」を創るーー「本当にできるの?」と不安になっていないか?
第5章 「振り返り」を習慣にするーー「勉強になった」「大変だった」で終わりにしていないか?
第6章 「余白」を大切にするーーいつも「成果」を出すことに追われていないか?
第7章 「能力」を補うーーいまのメンバーのままで走りきれるだろうか?
第8章 「キャリア」のイメージをもつーー自分やメンバーの「その後」を描けているか?
第9章 「変化・成長」を実感するーー目先の評価に惑わされて「成長」を見過ごしていないか?
■著者プロフィール
沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問(組織開発&ワークスタイル変革)。あまねキャリア株式会社CEO/一般社団法人ダム際ワーキング協会代表。プロティアン・キャリア協会アンバサダー。磐田市"学び×共創”アンバサダー。『越境学習の聖地・浜松』『あいしずHR』『読書ワーケーション』主宰。大手自動車会社、NTT データなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。主な著書は『組織の体質を現場から変える100の方法』(ダイヤモンド社)、『新時代を生き抜く越境思考』『EXジャーニー』『バリューサイクル・マネジメント』『職場の問題地図』(いずれも技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など。趣味はダムめぐり。#ダム際ワーキング 推進者。
下總良則(しもうさ・よしのり)
東北工業大学准教授(デザイン経営分野)/usadesign代表/一般社団法人 デザイン経営研究所 代表理事/一般社団法人RAC理事。多摩美術大学を卒業後、商品企画担当者・プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーを経て、usadesignとして独立。フリーランスデザイナーとして、世界シェア第3位の広告代理店ピュブリシス傘下ビーコンコミュニケーションズや、ネクストユニコーンをはじめとするスタートアップ企業にジョインし、「デザインと経営学」をテーマに活動を広げる。ニューヨークで伝統ある国際グラフィックデザインアワード「Graphis Design Award」にて2023年に金賞を受賞し、ロゴ部門単独では世界第2位、日本からのエントリーの中では第1位を獲得。このほか、日本高等教育開発協会が審査した「コロナ禍でのICTを活用した新しい授業公募」にて、唯一の審査会全会一致事例として最優秀事例に採択され、日本の私立大学の中で第1位を獲得するなど、受賞多数。グロービス経営大学院修了MBA取得。著書に『インサイトブースト 経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本』(ハガツサ)がある。