職場でも日常でも、思わずイラッとするひと言をぶつけられる場面はある。しかし、「本当に賢い人」はそこで感情に振り回されず、一瞬で「適切な返し方」を選べる。18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏にヒントをうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

イラッとすることを言われたとき、「本当に賢い人」は一瞬でどう返す?Photo: Adobe Stock

Q:イラッとすることを言われたとき、パッと言い返せません。どうすればいいですか?

――友人の悩み相談をさせてください。彼はまわりからイラッとすることを言われたときに、その場ではパッと言い返せずに、あとから、「チキショー、ああ言い返せばよかった!」と思うとのこと。いかがですか?

栗木さつき氏(以下、栗木):その人はその場では言い返してないということですよね。それでいいと思いますよ。イラッとすることを言ってくる相手には、同じ土俵に乗らないのがいちばんです。

 その場では、議論せずにさらっと返せばいいんです。たとえば「なんでこんなこともできないんだ」と言われたら、「ご指摘ありがとうございます。こういう事情でいまはできないので、あとで対応します」みたいな感じです。「ありがとう」と言って、淡々と理由を添える。そうやって受け流すのがいちばん頭のいい対応です。

相手に「ノー」と言うには?

――「イラッとする」ということで言えば、会社だとこちらの事情も考えずに、次々と仕事を振ってくる人がいます。これに対してはどうですか?

栗木:この問題は、まさに『一点集中術』が重視しているテーマの一つです。本書では、自分にとって大切なことに一点集中することで、充実した人生をつくっていけると説かれています。

 そのためには、他人に「ノー」と言う技術はとても重要なスキルです。相手が上司や目上の人だと「ノー」と言うのはなかなか難しいかとは思いますが、それでも、自分の人生を守るため、言うべき「ノー」は言っていく必要があります。

――どのように言えばよいのでしょうか。

栗木:たんに「できません」と拒否するだけでは、感情的な対立を生む可能性があります。

 ですが、「敬意を示しながらきっぱりと『ノー』を伝えれば、むしろ相手の信頼を獲得できる」と著者は言っています。その具体的な実践方法として、以下の四つのステップを示しています。

・相手への敬意を示す。
・何に同意するのか、同意した結果、何が生じるのかを明確にする。
・これまで、あなたが期待を上回る成果をあげたときのやり方を伝える。
・いますぐは無理だが、都合がつき次第、対応することを提案する。――『一点集中術』より

状況を示して、淡々と言えばいい

――これはたんなる拒否ではなく、建設的な提案ですね。

栗木:その通りです。たとえば割り込みをかけてきた人に対して、すぐに「いまは無理です」と返すのではなく、まずは「承知いたしました。詳細を教えていただけますか?」と、相手の状況と感情に敬意を払い、具体的な内容を把握することが重要です。

 その後、自分が取り組んでいる仕事やその緊急度や重要度を伝えて、「いますぐは無理ですが、都合がつき次第、対応します」などと提案します。相手が上司であれば、どちらに先に取り組むべきかは、上司の責任で判断してもらいます。

 こうした対応をとることで、自分の集中を守りながら、相手への礼儀もきちんと示すことができます。そして何より、これは自分の時間をむやみに他人に奪われないようにするための大切な姿勢です。

「ノー」と言えずに何でも引き受けてしまうと、気づけば自分の一日が他人の都合だけで埋まってしまうことになります。だからこそ『一点集中術』では、自分の価値観と目標にそって時間を使うことを強く勧めているんです。

 一点集中とは、たんなる時間管理のテクニックではありません。自分の人生を、自分の意志で選び取るための生き方そのものなんだと思います。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)