「仕事ができない人」にはある共通するパターンが存在する。能力や学歴とは関係なく、日々の働き方のクセが積み重なって、気づけば生産性を大きく落としてしまうタイプだ。18言語で話題の世界的ベストセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』から、訳者の栗木さつき氏にこの問題についてうかがった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
フローに入るには?
――『一点集中術』のなかで、何か一つの作業に没頭することで「フロー」の状態に入れるという話がありますが、栗木さんは「フローに入ってるな」と感じることはありますか?
栗木さつき氏(以下、栗木):ごくまれにですけど、本当に仕事に集中しているときに「フロー」に入れたなと感じることはあります。
それと、趣味のランニングでもありますよ。ランナーズハイと言われる現象ですけど、苦しかったのが急に楽になるんです。4、5キロくらいからですかね。ちょっと気持ちよくなってきて、「今日はもうずっと走ってられるかも」と思う瞬間があるんです。でも実際にはそんなことはなくて、10キロくらいでくたびれちゃうんですけど。
そんな没頭してゾーンに入っているような感覚は、私みたいな遅いランナーでもときどきありますね。
――本書では、まさにその「没頭」によって得られる「フロー」の状態について詳しく解説されています。
どんなときに没頭しやすいかは、その人の関心事や行動スタイルによって変わってくる。
絵画や写真などのビジュアルアート、スポーツ、音楽、ダンス、料理、読書、ハイキング、手工芸、ボランティア活動、ゲームといった勝負事など、人によってフロー状態に入りやすい活動は異なる。 ――『一点集中術』より
集中の先にあるごほうび
栗木:フローに入るには、目の前の作業に完全に集中することが前提となりますが、つねにデスクで集中し続けるのは難しいものです。
――ですよね。私もなかなか集中できずにいつも苦労しています。
栗木:集中できないときは、いったん仕事から離れるのも選択肢だと思いますよ。
実際、もんもんと考え込んでいてもずっと出なかった答えが、いったん机から離れて、外を走ったり、お風呂に入ったりすると、「あ!」と急にひらめいたりすることがあります。
もっとも、そのためにはまずは一点集中して必死に考える必要があって、そこから解放された瞬間にふっとアイデアが降りてくる感じがします。
働いても働いてもうまくいかない人
――編集の世界ではアイデアが命ですが、適度に休んだり趣味があったりする人のほうが成果を上げています。一方で、毎日ひたすら机にかじりついているのに、痛々しいほど成果が出ない人がいます。だらだらとメリハリなく働くのは、仕事ができない人の残念な資質と言えるかもしれません。
栗木:できる人って、集中と休息の切り替えがとても上手ですよね。逆に、休みも取らずにずーっと作業を続けて疲弊してしまって結果も出ないという働き方にはならないようにしたいものです。
――長時間働いていると「自分は頑張っている」という気持ちにはなりますが、だから成果が出るかというとそれは関係ないんですよね。大事なのは、本気の深い集中の時間をどれだけ持てるか。
栗木:粘って考えた後にひらめきの瞬間を味わうと、「頑張ってよかった」と思えるものです。一点集中する時間が一日の中に少しでもあると、やりがいを感じますし、成果にもつながって仕事にいい循環が生まれてきます。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の翻訳者インタビューです)









