デモ隊(奥)に催涙弾を撃ち込むパレスチナ自治政府治安部隊=2021年6月26日、ヨルダン川西岸ラマラ、筆者撮影
日本人にとって、ハマスは「過激派」や「テロ組織」としてしか映らないが、近年のパレスチナの世論調査では、ハマスの支持率が自治政府を上回っている。実は、パレスチナの人々は、単純な善悪では片づけられない複雑な事情を抱えている。イスラエルと自治政府という二重の圧政のもとで、パレスチナ人はいまどんな葛藤を抱えているのか?※本稿は、共同通信外信部記者の平野雄吾『パレスチナ占領』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
パレスチナ自治政府に
殺害された人権活動家
「アッバスは退陣しろ」「自治政府はもういらない」
2021年6月26日夕、パレスチナ自治政府の政府機関が集まるヨルダン川西岸ラマラ中心部。多数の市民が集まり、自治政府に対する抗議デモを実施した。きっかけは2日前の同年6月24日に発生した人権活動家ニザール・バナート(当時43)が自治政府治安部隊に襲われ死亡した事件だった。
ニザールは就寝中の未明に襲われた。ヨルダン川西岸南部ヘブロン郊外の親戚宅にいたが、侵入した治安部隊要員十数人が鉄の棒で殴打したほか、ペッパースプレーも使用し、暴行は約10分間続いたとみられる。
「助けたかったけれど、頭に銃を突きつけられ動けなかったんです。ニザールは『おまえたちは誰だ!』と叫んだのですが、殴られたうえ、スプレーをかけられたため過呼吸になりました。そのうち動かなくなりました」
同じ部屋で就寝し、一部始終を目撃したいとこのフセイン・バナート(20)が振り返る。
ニザールはそのまま治安部隊に連行されたが、病院で死亡が確認された。遺体を引き取った遺族が撮影した写真には、頭から足まで紫色の内出血や擦過傷の痕が無数に映っており、暴行の激しさを物語る。







