自治政府への批判は
死を意味していた
「われわれはおまえたちの奴隷ではない。パレスチナ自治政府幹部はどんなときも、何でも取引に終始した。パレスチナ革命のための武器さえ売り払った。傭兵のようだ」
ニザールはフェイスブックなどで痛烈に自治政府幹部を批判してきた。6月19日の投稿は以前にも増して過激だった。
パレスチナ独立国家樹立という「革命」の大義を犠牲にして、イスラエルと治安協力する自治政府。ユダヤ人入植地の拡大やパレスチナ人の追放に無力な自治政府。カネと権力のために汚職を続け、イスラエルや欧米諸国の言いなりになっているように見える自治政府は彼らの「傭兵」のような存在だ。おおむねそんな趣旨である。
実際、自治政府幹部らの汚職や権力乱用はたびたび報じられる。
自治政府トップの議長マハムード・アッバスの息子たちはビジネスマンで、次男ヤセルは建設や通信、保険など多角的事業を展開する「ファルコングループ」トップである。
中でもファルコンたばこはヨルダン川西岸やガザ地区で米国製たばこの独占販売権を所有する。ファルコン電気工事請負会社は2012年、米国際開発局(USAID)からヨルダン川西岸ヘブロンの下水道工事189万ドルの工事契約を2005年に受注したと報じられた。
父が自治政府トップという立場にあるが故に多額の収益を上げたと指摘される。
また2020年には、アッバスやその側近らの個人口座に欧州連合(EU)やアラブ諸国から自治政府に送付された支援金が横流しされているとも伝えられた。
ニザールが批判したのはこうした自治政府の縁故主義や汚職である。とくに自治政府を財政支援する欧州連合(EU)を非難し、支援を止めるよう訴えた。
ニザールが自治政府の標的になったのにはこうした背景があった。別のいとこ、アマルマグディ・バナート(27)によれば、治安部隊はこれまでにニザールを計11回拘束しているほか、同年4月には、ヘブロン郊外の自宅に押し入り、ニザールが不在だったため天井に発砲した。
「以後、ニザールは連日、自治政府関係者から『殺すぞ』と脅迫電話を受けていた」と証言した。







