ユダヤ人入植地「エビアタル」で、プレハブ小屋の建設に取り組むユダヤ人入植者=2021年6月27日、筆者撮影
イスラエル軍が占領するヨルダン川西岸で、政府の承認を得ないままユダヤ人が土地を占拠する事態が起きている。礼拝堂や保育園を建て、「新たな街」が続々と出現しているのだ。国際社会から批判を浴びてもどこ吹く風で入植を続ける、ユダヤ人たちの理屈とは?※本稿は、共同通信外信部記者の平野雄吾『パレスチナ占領』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
ヨルダン川西岸の丘陵に広がる
ユダヤ人の「新たな街」
岩が点在する荒野に無数のプレハブ小屋が広がる。シナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)や保育園、子ども用遊び場も目に入る。一部には舗装道路が走り、電線も敷かれていた。
2021年6月27日、ヨルダン川西岸北部ナブルスに近い丘陵地帯。うだるような暑さのなか、多数のユダヤ人が集まり「新たな街」の建設に取り組んでいる。
一角では、青年たちが杭を地面に打ち込み、木の板でプレハブ小屋を新たに組み立てる。ある者は民族衣装キッパを頭に被せ、またある者はペオートと呼ばれるもみあげを三つ編みにして伸ばす髪型をしている。隣のコンテナには、青と白のイスラエル国旗が高らかに掲げられていた。
青年の1人は筆者に強調した。
「われわれは開拓者なんです。かつて欧州から来たユダヤ人たちもこうやって未開の地を切り開いていったかと思うと、わくわくします。彼らの開拓者精神はわれわれにも引き継がれているんです」
青年らが建設に勤しむのが「入植地」である。入植地の存在が国際法違反であるという事実を大前提として、イスラエル軍が占領するヨルダン川西岸には、2種類の「入植地」がある。







