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時価総額1兆ドル(約155兆円)を超える企業が続出しており、その大半は人工知能(AI)ブームに乗ったハイテク企業だ。米製薬大手 イーライリリー は、全く異なる理由で近く「1兆ドルクラブ」に加わる可能性がある。それは減量特需だ。
重要なのは、イーライリリー株の軌道は、 投資家がにわかに疑問視 し始めている「AIを巡る市場心理やクラウド向け投資サイクル」に左右されないということだ。それどころか、ハイテクセクターから他のセクターへの投資資金の移動が追い風となる可能性さえある。同社に時価総額1兆ドル超を維持する力があるかどうかは、二つの問いに行き着く。肥満症治療薬の市場をどれだけ迅速に拡大できるか、そしてその市場をどれほど完全に支配できるかだ。
どちらの面でもイーライリリーの将来は有望に見える。同社は今年、メディケア(高齢者向け医療保険制度)へのアクセスを確保するとともに、肥満症治療薬「ウゴービ」を製造するデンマーク製薬大手 ノボノルディスク に対するリードを広げ、大きく前進した。そのようなわけで、投資家はイーライリリー株の上昇が時価総額1兆ドルで止まると考えるべきではない。
忘れてはならない重要なことは、AIブームと同様に、GLP-1受容体作動薬の急成長がまだ初期段階にあるという点だ。イーライリリーは2023年終盤に同社の肥満症治療薬「ゼップバウンド」の販売を開始したばかりであり、肥満症治療薬の供給不足が解消されたと米食品医薬品局(FDA)が宣言したのはつい昨年のことだ。生産規模が拡大し、新たな臨床データが出てきた中で、ゼップバウンドはウゴービをリードするようになった。ゼップバウンドの方が後から発売されたにもかかわらず、イーライリリーは今や肥満症治療薬の新規処方の明確な過半数を獲得している。これは市場力学の急激な変化を示す。







