文字の形から考える
「読みやすい日本語」の条件

 ところで、漢字、平仮名、片仮名の形には、特徴的なイメージがあります。漢字は角張って黒い、平仮名は丸くて白い、片仮名は四角で白いといった感じです。記号に例えると、それぞれ■、○、□でしょう。

顧客から届いたメールには適切な対応が求められる。

 を、上のイメージの記号で置き換えます。すると、

■■○○■○○□□□○○■■○■■○■○○○○。

 となります。

 次に、(1)の文を、意味のまとまりである文節で囲みます。すると、

(顧客から)(届いた)(メールには)(適切な)(対応が)(求められる)。

 となります。この結果を(2)に適用しますと、次のようになります。

(■■○○)(■○○)(□□□○○)(■■○)(■■○)(■○○○○)。

 この(4)をよく見ると、おもしろい法則に気づきます。文節が必ず■か□で始まり、○で終わっています。つまり、文節は「漢字か片仮名で始まり、平仮名で終わる」のです。もちろん例外もありますが、これが基本法則なのです。

 ですから、○から■、あるいは○から□に変わるところが切れ目です。英語なら、この位置にスペースがある感じです。でも、日本語では、○から■、○から□の変化がスペースの代わりをしているので、分かち書きをしないのです。

 以上から、読みやすい文章のためには、漢字、片仮名、平仮名を利用して、意味のまとまり(文節)がすぐに分かるようにすることだ、と言えます。

 特にメールの場合、じっくり読まれることは多くありません。よって、意味のまとまりが一目で分かるようにすることが、普通の文章以上に必要になります。

「意味の重さ」で
漢字と仮名を使い分け

 漢字と仮名の使い分けの大事なポイントは、まだあります。

 メールはじっくり読まれないと言いました。そこで、飛ばし読みするシーン、本屋で試し読みをする場合を考えます。 このとき、キーワードを拾い読みします。