「松江の有名怪談スポット」なのに、小泉八雲が書き残していない不思議…朝ドラのオリジナルストーリーが素敵〈ばけばけ第50回〉『ばけばけ』第50回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」連載です。本日は、第50回(2025年12月5日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

誰もがそわそわ、トキと小谷のランデブー

「はじめて見たよ3人続けて引っくり返すなんて」

 松野家では誰もが「そわそわ」して、湯飲みを連続でひっくり返す。

 松野家の人々のみならず、サワ(円井わん)までそわそわ。

 トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)はそれを不審に感じる。

 家の外で控えていたのは小谷(下川恭平)。ヘブン(トミー・バストウ)が元気になったらトキとお出かけする約束をしていたので、それを実行しようというのだ。そわそわの理由はこれだった。

 タイトルバック明け、トキはヘブンのゆるしを得て半休(?)をもらい、小谷と出かける。そういえば、トキには休みはないのだろうか。年中無休で働くことが勤務規定となっているのだろうか。

 小谷がチョイスしたランデブーコースは、清光院だった。トキが大好きな場所である。

「あまり怪談は知らないんですが、自分でいくつか調べた中でここがおトキさんが好きそうだな」と思ったという小谷の判断は見事。さすが優秀な学生である。だてにトキの自宅前をウロウロし、いろんな人にリサーチしていない。

「おっしゃるとおり、ここは大好きな場所です」とトキ。

「この寂しさがええですよね。文明だ西洋だと いまの時代から取り残された悲しさや切なさがあって」

「小谷さんもきっと感じる何かがあると思います」とはりきって清光院の階段を上がっていくトキ。

 その頃、ヘブンはなんだか落ち着かない気分になっている。それはトキがいないとお茶が切れても自分では入れられないというような不便さからか、それとも……。このとき、文机には、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)の写真は見当たらない。