清光院の秘密

 ヘブン宅へ帰ってきたトキ。楽しかったかと聞かれ、「ノー、ありませんでした」と答える。

 なんだかやるせない顔をするヘブン。外国の俳優はうまいというふうに片付けるのもなんだが、トミー・バストウはうまい。感情と身体の動きが見事に連動している。

 さて、ここで清光院について、制作統括の橋爪國臣チーフプロデューサー(CP)はヘブンのモデル・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが珍しく言及していない場所だと指摘する。

「トキが怪談を感じる場所を作りたいと思って、清光院を出すことにしました。最初に傳とランデブーに行き、そのあとを引き継いだのが銀二郎。ふたりは怪談が好きでトキを喜ばせました。小谷はまったく怪談に興味がない人で、銀二郎との対比になっています。同じ場所だからこそその違いが明確になります。この3回にはつながりがあると思っています。

 松江にはたくさんの怪談が残っていますが、清光院に伝わる『松風』は有名な怪談にもかかわらず、ハーンは文書に残していない。ハーンはあの辺りにはいろいろ行っているので、もしかすると書いていないだけで行ってはいるのかもしれませんが。

 セツと2人で行ったかどうか、記録が残っていないのでわからないので、トキにとって、ヘブンとは行かなかったけれど、他の人たちとは行っている場所になるのもいいかなと考えました」

 松江の名所のひとつである清光院。そして「松風」はなかなか興味深い怪談だが、なぜ松江と怪談が大好きだったハーンは記していないのだろう。セツは彼に話さなかったのだろうか。その空白からトキの心のやわらかい部分のオリジナルストーリーを紡ぎだしたことが素敵だなと思う。

 ヘブンは清光院に行かずとも、トキの大事にする「寂しさ」を知っている。

「松江の有名怪談スポット」なのに、小泉八雲が書き残していない不思議…朝ドラのオリジナルストーリーが素敵〈ばけばけ第50回〉
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