加齢で低下するのは
記憶力ではなく意欲
みなさんは、学生時代には寝る間も惜しんで勉強をし、英単語にしろ化学や数学の公式にしろ、大事なことは繰り返し復習して覚えてきたのではないでしょうか。
ところが、大人になるにつれて学習意欲が落ちていきます。
「物覚えが悪くなった」ことを加齢のせいにする人がいますが、記憶力が落ちたのではなく、覚えようという「意欲」が低下しているだけではないかと思うのです。
加齢で低下するのは記憶力ではなく、むしろ意欲のほうです。だいたい50代から60代にかけて、男性ホルモンの分泌量が目立って減少し始めます。代表的な男性ホルモンである「テストステロン」は、意欲や気力、攻撃性、好奇心と密接な関係があります。
ですから、60代前後からテストステロンの分泌が減少し、意欲が低下しがちになるのは当然のことといえるでしょう。
さらに、そこに前頭葉の老化も加わります。前頭葉は、思考や創造、意欲、理性、記憶などに関わっています。老化によって前頭葉が萎縮すると、意欲を維持することが難しくなってきます。
だからこそ私は、記憶力の衰えを気にするよりも、意欲を持ち続けることの大切さを訴えたいのです。各論的な意欲でもかまいません。そう、70歳からの記憶術には、「覚えてやるぞ」「忘れないぞ」という意欲も大きな要素なのです。
年をとる=記憶力が落ちる
という常識はウソ
「意欲」に関する話をもう少し続けましょう。
70代、80代の人が筋肉を使わないでいると、たちまち廃用現象(筋力や心肺機能の低下、うつ状態など)が起きて衰えてしまうのですが、脳に関しても同じことがいえます。頭を使わないで暮らしていると、脳はいよいよ衰えてしまうのです。
たとえば、老化の象徴のようにいわれる「記憶力」に関していうと、「年をとると記憶力が落ちる」と、まるでそれが常識のようにいわれていますが、すでにお伝えしたように実際にはそういうことはありません。脳機能上、75歳くらいまでは記憶力はさほど衰えません。急激に衰えるのは「覚えようとする意欲」です。







