●名刺交換するとき、相手の名前を声に出して読み上げる

 これは、Tさんならずとも多くの人が実践している方法かもしれませんね。名刺をもらったとき、「○○さんですね、よろしくお願いします」と、相手の名前を声に出して読み上げると、目と口と耳という3つの器官から、相手の名前を入力することができるというわけです。

●相手の顔の特徴的な部分に相手の名前を〝書き込む〟

 私が感心したTさん独特の手法は、「相手の顔の特徴的な部分に、名前を書き込む」という記憶法でした。

 出会ったとき、まず相手の顔のパーツから、最も印象的な特徴を見つける。おでこの広い人だったら「おでこ」、口の大きな人は「口」という具合です。

 そして、頭の中で、その特徴的なパーツの上に、その人の名前(漢字)を重ねてみるというのです。

 たとえば、広いおでこの上に「田中」さん、大きな鼻に「佐藤」さんなどという文字をイメージするのです。すると、その人と再会したとき、顔の特徴に注目するだけで、パーツの上に書いた文字の“残像”が浮かび上がってくるそうです。

 と、書きながら思い出したのですが、以前、クラブのママから、こんな“種明かし”をされたことがあります。

 クラブのホステスさんが、お客さんに向かって「俳優の○○さんに似ていらっしゃいますね」というのは、お客さんの気持ちをくすぐるためだけでなく、お客の顔と名前を覚えるためでもあるというのです。

 なるほど、初対面の人の顔を覚えるために、その人の顔を単純化し、分類するのは有効な方法といえます。漠然とした印象ではなく、「○○に似ている」と分類し、それを言語化してみる……。そうすれば、相手の顔と名前を記憶に定着できる確率が大いに高まるというわけです。

スムーズに記憶するためには
テーマを理解することが重要

 心理学の実験でも明らかにされていますが、物事の理解度が低いと記憶しづらいものです。当たり前かもしれませんが、わかっていないことは記憶できないのです。