たとえば、資格試験の勉強にしても、自分が学生時代に学んでいなかった分野だとなかなか覚えられないということがあるでしょう。逆に学生時代に受けていた授業と関連する分野だと、初めて学ぶ事項でも、すぐに覚えられるものなのです。

 もっと身近で単純な例でいうと、あなたが10年ぶりに町内会の役員をやることになったとしましょう。

 そのとき、役員名と役職が書かれた名簿が回ってきたとして、知った名前がなかったり、顔が思い浮かぶ人がいなかったりすると、役員名も役職もなかなか頭に入ってこないでしょう。

 すなわち、記憶の入力をスムーズに行うには、まずそのテーマを理解することが大切なのです。

『70歳からの老けないボケない記憶術』書影『70歳からの老けないボケない記憶術』(和田秀樹、ワン・パブリッシング)

 これは「インタレスト(関心)を持つ」にも通じます。理解することで関心が向き、注意力が高められれば、それだけで記憶力がアップします。つまらなく感じていたテーマも、理解することでだんだん興味が広がり、おもしろくなっていくものです。「理解」はインタレストと違って、意識的に高められるので、積極的に理解に努めましょう。

「記憶する」といっても、むやみやたらと暗記するのではなく、一度理解したほうが結局は近道なのです。

 理解が記憶定着へのステップだとしたら当然、知ったかぶりや見栄はNGです。社会人としての、あるいは人としての経験を積めば積むほど、わかりやすい入門書を避けたり、わからないことを気やすく他人に聞けなくなったりするもの。

 年齢を重ねるにつれて記憶力が落ちると感じるのは、じつはこれが落とし穴になっているからです。