視線行動の開始や制御に関わる
神経プロセスに影響を与える

 目の動きはアイ・トラッカーで精密に記録した。

 参加者は、眼球運動課題を3つの条件で実施した。会話条件では、WAIS-IIIやオリジナルの質問計45問(「イタリアの首都はどこですか?」や「昨日の夜は何時に寝ましたか?」など)に答える形式をとった。聴覚条件では、夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の朗読音声を聞き、その内容の理解に集中した。

 対照条件では、眼球運動課題のみを行い、追加の認知的負荷は課さなかった。3つの実験条件が眼球運動に与える影響を調べるため、各運動パラメータについて、条件(会話、聴覚、対照)および方向(8方向)を被験者内要因とした反復測定分散分析(ANOVA RM)を適用した。

 3つの実験条件を比較した結果、ターゲットの位置にかかわらず、会話条件では他の条件より反応開始時間が長いことが分かった。

 事後比較では、会話条件(平均279.7ミリ秒〔ms〕、標準偏差〔SD〕32.8)は、聴覚条件(平均260.4 ms、SD 29.7、P=0.07、効果量〔d〕=0.62)および対照条件(平均261.3 ms、SD 32.8、P=0.09、d=0.56)と比べて、反応時間が長くなる傾向を示した。

 視線移動に要する時間についても同様で、会話条件(平均260.1 ms、SD 107.6)は、聴覚条件(平均141.5 ms、SD 58.9、P<0.05、d=1.37)および対照条件(平均160.8 ms、SD 102.1、P<0.05、d=0.95)より有意に長かった。

 さらに、視線調整に要する時間も同様の傾向を示し、会話条件(平均1226.5 ms、SD 723.3)は、聴覚条件(平均493.2 ms、SD 361.5、P<0.05、d=1.28)および対照条件(平均548.9 ms、SD 461.2、P<0.05、d=1.12)より有意に延長していた。

 著者らは、「本研究では、迅速かつ正確な視線移動と会話を同時に求められる負荷の高い状況において、視線行動の時間的パラメータが遅れることを示した。これらの結果は、会話に伴う認知的負荷が、視覚運動処理の最初のステップである視線行動の開始や制御に関わる神経プロセスに影響を与える可能性を示唆している」と述べている。

 なお、本研究の限界点として、個人ごとの認知負荷を定量化できず、会話そのものか負荷の影響かの区別もつかないため、干渉の閾値や程度は明らかでない点を挙げており、今後の取り組むべき研究課題であるとした。(HealthDay News 2025年11月17日)

Abstract/Full Text

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0333586

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