子どもたちが情報端末を持っていなかった時代、悪ふざけはスカートめくりや、ズボン下ろしといった行為で終わっていました。しかし、彼らがカメラ付きの情報端末を手にしたことで、その行為を撮影し、他者と共有するようになったのです。

 大半の子どもたちはそうした行為を単なる悪ふざけとしか捉えておらず、まさか犯罪と呼ばれるような悪質な行為をしているとは考えていないはずです。

 でも、スカートめくりやズボン下ろしをしているところを映像として記録すれば、そのデータはれっきとした児童ポルノとなり、ネットにアップロードされればブラックマーケットに流れて高値で取引される違法商品になります。

 東京都の小学校に勤める先生が、このような体験を話してくれました。

「国が児童全員に1台ずつタブレットを配りましたよね。その年だったと思いますが、担任をしている6年のクラスの親から『うちの息子のタブレットに変な画像がある』と相談が寄せられました。

 次の日にその男の子を呼び出してタブレットを見ると、同級生の男の子の下半身が映っている写真が何枚か出てきました。私はなんでこんな写真を撮ったのかと尋ねました。その子はクラスの友達数人とふざけてやったと答えました。

 それで、その友達たちを呼び出してタブレットの中身を調べたところ、男の子だけでなく、女の子のスカートの中を盗み撮りした画像まで出てきました。愕然としたのは、彼らが平然と『遊びでやっただけ』と言ってまったく罪悪感を抱いていなかったことです。

 私は校長に報告して、親を呼んで厳重に注意しました。私の頭の中には、タブレットを配ったばかりだったので、リテラシーが身についていない子がつい起こしてしまったトラブルなのだろうと思っていました。

 しかしあれから数年が経った今、同様のトラブルはあちらこちらで起こるようになっています。しかも、低学年でも起きていて3~4年生のクラスでも見られるようになっています。リテラシーが高まるどころか、子どもたちは使い方に慣れて、いたずらの道具として使用するようになったのです」