シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

人生の道を踏み外さないために実践したい、2つの習慣Photo: Adobe Stock

自己認識を誤ると、
人生は変なほうに転がっていく

 私が政治家の時代には、誰もが私をおだてて利用しようとして、周囲の人から褒められることが多かった。もちろん、その大半は本音ではない。

 そのときに私が自己認識を誤らないように、辛辣な評価を共有してくれたのは、家族と後援会長だけだった。

「お前、この頃調子に乗っているぞ」
「本当は評判よくないぞ」

 などと直言してくれた。

 うまくいっているときや、お金があったり、権力を持ったりしたときは、周りの人はおだててくる。

 そこで自己認識を誤ってしまうと、人生は変なほうに転がっていくので要注意だ。

 ただ、日本人は調和を大事にするので、本音をストレートに言ってくれる人は少ない。

 そういう人を常に作っておくと同時に、うまくいっているときこそ、健全な自信は持ちながらも、「これは今、自分は失敗の入り口に来ているぞ」と過信を抑えて、客観性を持ってデータで自己評価を自分でやる訓練が日本では必要だ。

敵を知り己を知れば、
成功の確率は高まる

 私は、たまにグローバルなニュース番組に呼ばれて、英語で時事問題を解説することがある。その際には、番組に出演したビデオは、必ず共有してもらうことにしている。

 自分の出演したビデオをあとから見てみると、自分の分析力や表現力の課題、弱点が浮き彫りになって、過大な自己評価もはがれてくるからだ。

 そして、相手の情報もできるだけ集めて、ロールプレイで相手になって考えてみる。

 そうすると、相手から見た世界が見えてくるのだ。

事前に情報収集し、
自らの現状を正しく把握する

 これは相手に向かう作戦を立てるときに、とても役に立つ。

 相手から見た自分、相手から見える世界、相手の意向や優先順位、これがわかれば、物事がうまくいく可能性は、ぐんと高まる。

 第二次世界大戦時のイギリス軍も、ドイツ軍の暗号解読にやっきになっていたが、それができるようになって圧倒的優位に立った。

 太平洋戦争時に日本の暗号がアメリカ軍に完全に見抜かれていたことは、前述した通りだ。

 とにかく、事前の情報収集と、それを活かすため、できるだけ正しく自らの現状把握につとめることだ。

(本稿は君はなぜ学ばないのか?の一部を抜粋・編集したものです)

田村耕太郎(たむら・こうたろう)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。