日本の地銀に残る“売り手目線”をどう変えるか?世界100超の金融機関が導入した「ファイナンシャル・ヘルス」を徹底解説!写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

従来とは一線を画す金融商品の推進方法

 今回は、ここ数年で世界的に広がりを見せる「ファイナンシャル・ヘルス」の考え方を紹介する。オーストラリアのディーキン大学の調査によると、人の幸福の実現要因として、人間関係や目的意識に並び、「財務的コントロール」が挙げられるという。金融機関が、顧客に現在・将来の資金ニーズを正しく把握して将来への備えを促し、幸福の実現に導いていくのがファイナンシャル・ヘルスだ。金融商品の購買につながり「幸福の実現に近づいた」と顧客が実感すれば、銀行へのロイヤルティーも上昇する。

 このような考え方に基づき、「顧客個人の総合的な財務状況やその充実度」をスコアリングした上、これを維持または改善に資する十分な情報を提供し、顧客に自ら必要な金融商品を購入するように促す。これは同じ年齢の顧客に同じ商品を紹介したり、「他の人との類似性」から「よく買われているもの」を勧めたりすることとは一線を画す。「買わせたいか」「買いそうなのか」ではなく、「その顧客が本当に必要なものは何か」を軸にするのである。欧州を中心に、大手グローバル銀行や地域銀行など100を超える金融機関がこの考え方を導入し、個人顧客のロイヤルティーを高め、さまざまな商品のクロスセルにつなげている。

課題解決にフォーカスし必要な情報を提供せよ

 対して日本の銀行は、低金利環境が続くなか、投資信託やファンドラップ、保険商品、クレジットカード、デビットカードなどの多様な金融商品を推進することで役務収益を強化してきた。一定の成果を収めているものの、各種商品・サービスの利用率は高いとはいえず、顧客のロイヤルティーも低い状態にある。その要因の一つは、いまだに銀行・商品起点のアプローチに執着し、顧客中心のアプローチをとれていないことにある。