団地での基本的な生活ルールから、団地での暮らしに役立つパンフレットの作成・配布などを通じ、中国人住民の理解を深めていったほか、日本人と中国人の住民とが交流するイベントなどを開くことで、徐々にだが、団地は落ち着きを取り戻していったという。
快適な芝園団地から去り
一戸建てを購入する中国人も
時代とともに、その姿を変えてきた芝園団地――。
だが、かつてを知る者からすれば、ここで多くの日本人が暮らし、活気をみせていた時代があったかと思うと、なんとも言えない寂しさに誘われるようだ。
同団地に完成当初から40年以上住み続ける、自治会長の真下徹也さん(86)は寂しげに語る。
「ここに住む日本人は、みんな高齢者ばかりになってしまった。すっかり、ここは中国の団地になってしまったよ」
ただ、この芝園団地からも今、中国人居住者の「卒業組」が出始めている。
IT企業でエンジニアとして働く劉宝才さん(44)。同団地に2020年まで約5年間暮らしたが、家族と一緒にさらに快適な生活を求めて引っ越した。
「近く、日本の永住権を取得できる」といい、同じ川口市内に一軒家を買った。もはや、日本に住む多くの中国人たちも、賃貸の団地に住むより、一戸建てを選ぶ時代にまでなりつつあるのか。
日本に腰を据え、根を下ろし始めた中国人たち――。
そんな川口市には現在、約2万5000人もの中国人が住む。「新チャイナタウン」と呼ぶにふさわしく、東京23区と横浜市など政令指定都市を除くと全国最多の人数を誇る。
都内へのアクセスの良さや物価水準などから、隣接する埼玉県蕨市にも約5800人の中国人が居住。取材班の調べによると、市内全人口に占める中国人の比率は7.7%と、全国でも群を抜き、ここもまさに新チャイナタウンと化している。
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『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(日本経済新聞取材班、KADOKAWA)







