人種が違うと結婚できない。その決まりを破るヘブン

 ヘブンのモデルであるハーンの歴史を読んでも、ヘブンの様子を見ても、世話してくれる女性を求めている印象を受ける。ハーンのひ孫・小泉凡の著書『セツと八雲』(朝日新書)を読むと、トキのモデルであるセツのことを「私が支えてあげないと、と感じさせるところがあったのでしょう。18歳年下のセツでしたが、どこか母親のようなまなざしを向けていました」とある。

 さらに小泉凡の著書には、ハーンが最初に結婚した女性の「幽霊話が絶品でした」とあり、彼女と別れたあと、西インド諸島のマルティニーク島に住んだときは、地元女性に家事をしてもらい、「彼女の語る幽霊話に耳を傾けたものでした」とある。ハーンはブレない人だったと感じる。身の回りの世話をしてくれて、幽霊話が得意な聡明(そうめい)な女性が好みのようだ。

 そんなハーンをモデルにしたヘブンも……。

 ただ、これはあくまで、のちに他の人が記したものである。ハーンと女性の関係にももっと別な面もあったかもしれない。

 話をヘブンに戻そう。マーサと暮らすようになってからいいことが続き、ヘブンはジャーナリストの賞を獲るまでになる。仕事も生活も順調でこのうえなく幸福。この流れでマーサにヘブンはプロポーズしたが、マーサは躊躇(ちゅうちょ)する。

 オハイオ州では人種の違う者同士の結婚は禁止されていた。ヘブンはいろんな国を転々としてきたからか、人種の違いを気にしないようだ。ヘブンのモデルであるハーンもそうである。

 周囲の偏見を押し切って結婚した。それがなぜ破局を迎え、現在のヘブンのように定住することを恐れるのか――。

 第54回に続く。明日も英語回であろうか。でも英語シーンはスピーディで緊張感と密度があって見応えがある。

「家事のついで」じゃ無理!前代未聞の“洋画のような朝ドラ”が今受け入れられるワケ〈ばけばけ第53回〉
「家事のついで」じゃ無理!前代未聞の“洋画のような朝ドラ”が今受け入れられるワケ〈ばけばけ第53回〉