もちろんあまりにも形が崩れていたり、汚れが目立ったり、ましてやにおいがしたりするのはもっと大きな違和感につながるので論外です。

 靴も同様で、光沢が出すぎるのを避けるため、クリームや靴墨はあまり使わず、日頃の手入れは布で拭いて汚れやほこりを落とすだけにとどめるようにしていました。

 その日の予定を見て、工場の内部に入る予定が多いときは朝から革靴ではなく、中に鉄板が入った安全靴を履いて取引先を回ることもしばしばでした。

 安全靴を履いていることで「お、今日はあんたも安全靴かい」などと会話のきっかけになることもありますし、「この人も我々と同じ、現場で働く人間なんだな」と感じてもらうことが、取引先のみなさんとの距離を縮める助けになります。

 もちろん、訪ねる先がオフィスなのに安全靴を履いているのは違和感の原因になりますので、そういうときは革靴も持ち歩き、訪問前に履き替えるようにしていました。

 一方で、ワイシャツだけはしわや汚れが不潔さに直結するため、毎回必ずクリーニングに出し、真っ白でアイロンが利いた状態をキープします。

 家で洗濯するのに比べると多少出費はかさんでしまいますが、ここは必要な投資だと考えてください。

想像力を働かせれば
営業に最適な服装が導ける

 ここまで述べたことは「身なりに気を遣わない」ということではありません。

「最大限に気を遣って、身なりに気を遣っていない(だけど清潔な)人を演じる」ことが、製造業の現場で営業をするためには最善の方法だと考えたのです。

 相手を気遣うわけですから、腕時計と同様、もしお客様が経営者や富裕層など「ビシッ、パリッ、ピカッ」とした人たちばかりなら、自分も同様の服装をしないと違和感を持たれてしまうかもしれません。場合によっては高級ブランドのスーツも必要でしょう。