ビッグモーターPhoto:PIXTA

元ビッグモーター幹部で、現在は株式会社BUDDICA(バディカ)を立ち上げ代表取締役を務める中野優作氏。2023年のビッグモーター不正事件を受け、中古車販売業界の極端な利益至上主義に触れながら、営業マンが一番大切にすべき心得を語ります。本稿は、中野優作『クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

営業の新時代にトップセールスになるには?

「中卒の未経験から始めて、何故トップセールスまで最短でいけたんですか」とよく質問される。こういう質問を受けると決まってこう答える。誰よりも考え行動したから。

 すると具体的には何をやればいいんですか、と次の質問がくる。何百回、何千回と繰り返してきたやりとりだ。

 僕がビッグモーターに入社した時に初めに教えてもらった事は、「買うまで帰らせるな」だ。

 それに加えて、オプションなしが希望ならば、売らないでいいというルールだった。売り手都合の販売方法だった。

 お客様の課題によってアプローチが違えば対処法も違う。だからまずは聞く事から始めるべきで、話す事じゃない。だけど実際の現場では、店の売りたいクルマを売ってくるような指導を受けた。トークスクリプトを作って商品説明のロープレをやらされ、セリフを丸暗記した。これでは売れないと理解していた僕は、自分なりの商談を追い求めた。

セールスに特別な必殺技なんてない

 上司の言う通りのトークスクリプトを真面目に練習していた同期の仲間たちは、結果が出ずに辞めていった。こんな事が皆さんの会社でも起こっていないだろうか?

 高いノルマ設定と強引なマネジメント、売り手都合の商談を押し付けて、本来お客様が望むようなサービスを提供できているのだろうか?それ以前に、そもそもお客様が話す気になるような、身なりや立ち居振舞いを、君はできているのか?

 クルマに限らず物を売るには不変の法則がある。何十年も前から言われているような事で、時代が変わろうとも本質は変わらない。それをまずは受け止める事から始めよう。言い方は変わっても本質は同じ。魔法のような必殺技など存在しない。稀に生まれ持った特殊な才能で変わった売り方をするトップセールスもいるが、特別な必殺技なんか存在しない。

 大切なのは、自分の課題を把握し、正確に対処する事だ。

売るべきものを間違えるな

 多くの人が営業という仕事を勘違いしている。

 そこから始めていきたいと思う。僕は新人の頃、先輩が決まらないと判断して「捨てた」商談によくアタックしていた。この店では買わないという結論が出て帰ろうとしているお客様だ。何故商談を捨てるかというと、成約率が下がると店長に詰められるからだ。だから難しいと判断したら商談をなかった事にする先輩が多かった。