凝灰岩は柔らかく加工も容易なので本州などでは石仏が彫られたりするが、軟石の産地である手宮には洞窟に古代人が絵や紋様を彫っていた。

観光施設と歴史的建造物が
混在する池内駅周辺

 思えばこの一帯は個々の建物については歴史的風景も感じられるのだが、エリア全体から見れば札幌にもほど近く、中高層のマンションも必ず視界に入るほど増えている。居住環境と歴史的景観の両立は難しいところだ。

 線路は右へ緩くカーブしていくが、遊歩道らしく所どころにベンチなどが設けてあるのが嬉しい。

稲穂付近のベンチ稲穂付近のベンチ。同書より転載

 観光客だけでなく市民も散策や犬の散歩など日常的にこの道を歩いているのは、やはり自動車に煩わされない安心感と緑の多い公園的景観、ひいき目で見ればレールの残る廃線の懐かしさなどが相まって人を惹きつけている側面もあるだろう。

「廃線ランキング」で
第1位に輝くほどの魅力

『ぶらり鉄道廃線跡を歩く』書影『ぶらり鉄道廃線跡を歩く』(今尾恵介、PHP研究所)

 平成29(2017)年7月に日本経済新聞が「廃線ランキング」を行った。選定にあたっては私も協力した企画だが、フタを開けてみるとこの手宮線が第1位であった。

 もちろん誰もがすべての廃線を歩いたわけではないのだが、藪こぎが必須だったりする多くの廃線を制して手宮線が堂々トップの座に就いたのは、ロケーションも良く気軽に歩けることに加えて、本物の線路が残っているからだろう。

 おまけに終点の手宮には鉄道車両を多く収める小樽市総合博物館が待っているから、これは納得できる。

 ちなみにこの時のランキングで第2位は高千穂鉄道(宮崎県・日本一高い橋梁がある)、第3位は同和鉱業片上鉄道(岡山県・動態保存を行っている)であった。