個人競技でテンポの早い卓球は
いまの流行りにドンピシャ

 ATP、WTA(女子テニス協会)といった世界組織によるランキング制度、グランドスラムを中心とした年間スケジュール、1ポイント単位で結果が出る明快なルール構造、加えて1ゲームや1セットなど短い時間でも明確になる勝敗など、テニスはライブベッティングやマイクロベッティングとの相性が抜群である。

 このようなテニスの特徴は、卓球とも共通している。

 卓球は1ゲーム11点、3~4ゲーム先取というフォーマットで進行し、1ラリーごとにポイントが決まるスピード感がある。個人種目である点や、サーブ権が2本ごとに切り替わることなども、戦況を読みやすくする要素だ。試合時間も比較的短く、1日に複数の試合が進行できるため、スポーツベッティングの対象として非常に効率が良い。

 これらの試合構造の類似性が、卓球をテニス同様、スポーツベッティング市場において注目を集める競技にしている。

 卓球ベッティングの転機となったのは、2020年のパンデミックである。主要なプロスポーツが相次いで中止・延期される中、ベッティング業界は生き残りをかけて「賭けられる対象」を血眼になって探した。

 その結果、ロシアやウクライナを中心に行われていた小規模な卓球トーナメントが突如として脚光を浴びることになった。

 このとき、Bet365やDraftKingsなど主要オペレーターのライブ配信と連動したオッズ配信が急速に整備され、ユーザーはまるでeスポーツを観戦するかのような感覚で、数分ごとに流れが変わる卓球の試合に賭けるようになった。

 マイクロベッティングと呼ばれる秒単位の賭けは、テニスよりもテンポの速い卓球との親和性が高く、新たなスポーツベッティング市場を作り出した。

卓球が八百長に侵食されるまで
そう時間はかからなかった

 しかし、この突発的な成長は同時にリスクも孕んでいた。多くの試合がセミプロやアマチュアレベルで行われ、透明性が不十分な大会が多かったからである。