ジョコビッチも狙われた…テニスでもサッカーでもない、八百長に浸食された「意外な競技」Photo:SANKEI

スポーツベッティングの拡大とともに、スポーツの醍醐味とされてきた逆転劇が賭けを乱す要素として嫌われ始めている。もはやアスリートは、競技者としてではなく投機の対象として見られているのだ。スポーツベッティングの行き着く先を占う。※本稿は、相原正道著『スポーツと賭博』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

負ければ数万ドルの八百長を
持ちかけられたジョコビッチ

 スポーツベッティングにおける個人競技は、八百長や不正の温床となるリスクを常に孕んでいる。

 特に、テニスは選手の収入格差が激しい。なおかつグローバルに人気を誇るので、八百長や不正の温床になりやすい。

 世界のトッププレイヤーとランキング外の選手との経済格差は極めて大きい。上位選手は賞金やスポンサー収入で億単位の収入を得るが、下部ツアーを回る選手は遠征費さえ捻出できないことも少なくない。

 こうした選手たちにとって、わずかな報酬の代償に試合結果を操作する誘惑は、あまりに身近だ。

 2016年、テニス界の絶対的王者であったノバク・ジョコビッチは、かつて自らが八百長を持ちかけられた経験を告白した。2007年、ロシア・サンクトペテルブルクの大会で、彼の周囲の関係者を通じて、数万ドルの見返りとともに敗退を促されたという。

 一方、2016年に英国の公共放送BBCと米国メディアBuzzFeedが共同で調査を実施し、過去10年間で上位50位以内の16人の選手が八百長に関与した可能性があると報道したこともある。

 この報道に対し、ATP(男子プロテニス協会)のクリス・カーモード会長は、「証拠のもみ消しは断じてない」と公的な立場から強く否定している。