ロシア卓球協会やITTF(国際卓球連盟)非公認の試合で多額の金が動くようになり、不正操作や八百長の温床になる可能性が高まった。実際、2021年には複数の東欧卓球大会で不正疑惑が報道され、いくつかのブックメーカーは市場から一時撤退を余儀なくされた。

 2020年7月、米国ニュージャージー州のゲーミング規制当局は、ウクライナの卓球イベントにおける八百長の可能性を警告され、Setka CupやWIN Cup、TT Cupなどの大会に対するベッティングを一時停止にした。

 特定の選手(Anastasia Efimova、Gleb Zotovなど)に関する疑惑も浮上し、Setka Cup側はこれらの選手を一時的に出場停止とし、ポリグラフ(嘘発見器)テストの導入などの対策を講じた。

 また、ウクライナ卓球連盟(UTTF)は、パンデミック中の大会参加を理由に、365人の選手を資格停止処分とした(David Purdum:New Jersey suspends betting on Ukrainian table tennis after match-fixing alert、ESPN、Jul 9, 2020)。

 この問題は国際的にも波紋を広げ、オーストラリアでは元卓球選手のアダム・グリーンが、ウクライナの八百長試合に賭けて約47万ドルの利益を得たとして起訴された。

 彼は1170件の試合に賭け、約19万ドルをウクライナの関係者に送金していたとされている。裁判では有罪を認め、執行猶予付きの3年間の矯正命令と100時間の社会奉仕活動が科された(ABC News:Former Australian table tennis player Adam Green avoids jail over $473,000 won on rigged matches in Ukraine、12 Sep 2023)。

 さらに、2025年3月には、イングランドの卓球選手4人が八百長と不正なベッティング活動に関与したとして、Table Tennis Englandから資格停止処分を受けた。

 これらの調査は、英国ギャンブル委員会のスポーツベッティング情報ユニット(SBIU)や国際卓球連盟による国際的な協力のもとで実施された(Paul Stimpson:Table Tennis England statement on betting case、Table Tennis England、March 18, 2025)。

スマートフォン世代にとって
秒で賭けられる卓球は魅力的

 卓球のベッティングでは、顔も知られていない選手が突如としてブックメーカー上に登場し、世界中で彼らに賭けるという事態が生じた。とはいえ、賭けに参加する一部の人は、選手のことをよく知っているかもしれない。