「買った途端に急落」「損切りできず塩漬け」個別株で大きなリターンを狙う個人投資家ほど、こうした失敗に身に覚えがあるものです。では、株のプロは、あなたがチャートを見つめているその瞬間、一体何を考え、どのように行動しているのでしょうか? 『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』は、その思考をクイズ形式で体感できる一冊です。発売以来、投資初心者からベテランまで、熱烈な支持を集めています。著者は、日本株のファンドマネジャーとして2000億円超を運用してきた楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書に登場する「勝てる人のチャートの使い方」を紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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なぜ小型成長株を狙うなら「チャート」を見るべきか?
「インデックス投資だけじゃ物足りない」「やはり個別株で大きなリターンを狙いたい!」――そう考える意欲的な個人投資家にとって、市場を上回るハイリターンの可能性を秘める小型成長株は、魅力的なターゲットです。
しかし、大きな利益を狙える裏側には、大きな損失のリスクも潜んでいます。成功を手にする個人投資家は、このリスクとどう向き合っているのでしょうか。
窪田さんは『株トレ』の中で、こう述べています。
「チャートを見るとは、失敗した時に速やかに損切りできる準備をしておくということです」(『株トレ』より)
個別株のトレードが上手い人に共通する「2つの力」
勝つためには銘柄選びが最重要だと思われがちですが、窪田さんがそれ以上に重視しているのが次の2つの力です。
・「チャート」を冷静に見る力
・失敗した時にすばやく売る決断力
窪田さんは、長年市場と向き合ってきた経験から、この2つの力が、トレードの成否を分ける決定的な要素だと伝えています。
買った途端に急落!あなたならどうする?
次のチャートは、『株トレ』に掲載されているチャートです。

約2週間前に二番底をつけた後、売買高の増加とともに、株価が上昇していました。売買高の増加を伴う株価急騰は、その銘柄が人気になってきていることを示す「買いシグナル」です。
そこで、数営業日前に、この株を買いました。ところが、買った直後に急落してしまいました。
さて、あなたなら、ここからどんな行動をとりますか?
A. 売り(損切り)
B. 買い増し(ナンピン)
C. しばらく様子見
「下がったところで買い増して平均取得額を下げるべき?」「いずれ戻りそうだから、ひとまず放置?」
多くの人が陥る、この迷いこそが、投資の勝敗を分ける瞬間です。
「買いシグナル」を打ち消す「強い売りシグナル」
窪田さんは、『株トレ』でこう説いています。
「どんな買いシグナルも、直後にそれを打ち消す強い下落があれば、強い売りシグナルに変わる。どんな売りシグナルも、直後にそれを打ち消す強い上昇があれば、強い買いシグナルに変わる」(『株トレ』より)

チャートを冷静に見直すと、売買高の減少とともに株価は急落し、安値を更新しています。これは明確な「売りシグナル」です。
売りシグナルが出た以上、外れたと認め、速やかに損切りするしかありません。過去の判断に引きずられず、ためらわず売る――これができる人こそ上級者です。
多くの個人投資家がやってしまいがちな「最悪の行動」
損切りをためらって「様子見」や「買い増し」を選んでしまうと、致命傷を負うことになりかねません。
・「そのうち戻るだろう」と放置して塩漬け化
・意地になって買い増しをして、資金を長期拘束
こうした行動こそ、多くの個人投資家が失敗する最大の原因です。
個別の勝ち負けより大切な「損小利大」の考え方
「買いシグナルで買ったのに、すぐに損切りしないといけないなんて、チャートのシグナルって結局あてにならないんじゃないの?」
そう感じるのも無理はありません。しかし、100%勝てるトレードはありません。
実際に、窪田さんが『株トレ』で紹介しているチャートのシグナルも、当たる確率は7割だと言っています。10回に3回は負けるし、2回トレードした場合に、両方当たる確率は50%以下です。
2回連続で7割のシグナルが当たる確率は49%
「この銘柄は絶対に伸びる」「メディアで専門家が絶賛していたから間違いない」――このような先入観が強い人ほど、チャートを冷静に見ることができなくなり、損切りを遅らせがちです。
個別株のトレードで資産を増やすためには、「損小利大」が鉄則だと窪田さんは強調しています。負けた時の損失をできるだけ抑え(損小)、利益が出たときに大きく伸ばす(利大)ことが、トータルで資産を増やしていくために必要な行動なのです。


