住所変更を放置すると罰金!? 知らないと損する不動産の新ルール
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。

住所変更を放置すると罰金!? 知らないと損する不動産の新ルールPhoto: Adobe Stock

住所変更を放置すると罰金!? 知らないと損する不動産の新ルール

 2026年4月1日から、不動産の名義人が引っ越しなどで住所を変更した場合、「住所変更登記」が義務になります。これまでは任意だった住所変更の登記が、法律により義務化され、怠ると過料の対象になる制度です。

 具体的には、引っ越しなどで住所が変わった場合、変更から2年以内に法務局で住所変更登記の申請をしなければならないとされています。これを怠ると、5万円以下の過料を科される可能性があります。

「過去に住所変更した人」も対象に

 さらに注意すべきは、「過去に住所を変更して登記を放置していた人」も対象となることです。例えば、2024年時点ですでに登記上の住所と現住所が異なっている方は、制度施行後の2028年3月31日までに登記の変更をしなければ、過料の対象になる可能性があります。

 申請自体は非常に簡単で、マイナンバーカードを使えば、インターネット経由で登記情報を変更する「スマート変更登記」も可能です。書類提出も1回で済み、スマート変更登記の費用は無料です。体力的・経済的負担が小さいことも特徴です。

なぜこんな制度が始まった?

 では、なぜこのような義務化が必要になったのでしょうか?

 実は、日本全国で「所有者不明土地」が増加しているのが大きな背景です。登記上の住所と実際の住所が違っていたり、登記名義人がすでに亡くなっていて相続登記がされていない土地は、所有者を探すのに多くの手間がかかりします。このような土地は、インフラ整備や災害復旧を遅らせたり、近隣住民の迷惑になったりすることもあり、大きな社会問題となっているのです。

スムーズに相続・売却するために

 この問題に対応するために、相続登記と住所変更登記の義務化が法制化されました。また、「所有不動産記録証明制度」とも深く関係しています。これは、2026年からスタートする新制度で、全国の不動産のうち「自分名義のもの」が一覧でわかる証明書を法務局から取得できるというものです。しかし、登記上の住所が古いままだと、法務局が本人確認を行えず、この証明書の発行がスムーズにいかないおそれがあります。

 つまり、住所変更登記の義務化は、「罰則を避けるため」だけでなく、「自分の不動産をきちんと管理し、スムーズに証明・相続・売却できるようにするため」にも重要な手続なのです。もしも引っ越し後に登記を変更していない方がいれば、これを機に確認しておきましょう。将来のトラブルを防ぐ、非常に大切な一歩です。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・編集を行ったものです)