ランキング後退が生んだ危機感~月180時間の「集計地獄」からの脱却

 こうしたデータ分析の裏側には、2017年に味わった危機感があった。

 パナソニックグループの白物家電事業を担う「くらしアプライアンス社」がデータ分析に本格的に乗り出したのは、2017年。きっかけは、外部調査機関が実施する「デジタルサポートランキング(家電部門)」で、それまで1位を維持していた同社が、3位に後退したこと。競合がしのぎを削る中、同社も対策を講じる必要があった。

 顧客満足度の向上には、今や顧客データの収集・分析が欠かせない。だが、同社のCX(顧客体験)向上を担う堀田西五さんたちが悩んでいたのは、データ分析以前の問題だった。

 製品に関するよくある質問をまとめたFAQサイトには、毎日数万件ものアクセスデータが蓄積される。しかし、月次で集計するだけで180時間。「集計作業に追われ、肝心の改善施策にまで手が及ばず、データを活用できていなかった」と振り返る。貴重なデータは山のようにあるのに、宝の持ち腐れになっていたのだ。

 この状態を変えるため、堀田さんはデータ分析ツール「Domo」を導入した。決め手は、現場の担当者が自分で操作できることだった。

パナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 係長 堀田西五さんパナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 係長 堀田西五さん Photo by M.S.

「私がITに詳しくなかったことが、かえって良かったのかもしれません」と堀田さん。自分が使いこなせないツールは、きっと現場の他のメンバーも苦労する。だから、「誰もが使えるツール」を選ぶことができたという。

「断捨離」で、「誰が見ても分かる」ツールに

 Domoによって、FAQサイトのアクセス数、アンケート結果、外部検索エンジンからの流入キーワードなどのデータを一つのダッシュボードに集約し、即時チームメンバーで共有できるようになった。つまり、180時間かかっていた月次集計はゼロになった。

 ただ、当初は情報量が多すぎ、これはこれで見るのもうんざり、という声が出た。現場のメンバーにデータ分析が得意な人は少ない。ハードルを下げる必要があった。