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2025年5月、パナソニックホールディングスはグループ全体で1万人規模の大型リストラを行うことを公表した。パナと日立製作所、大手電機メーカー2社の会計指標の推移を見ながら、パナが「黒字リストラ」を断行する背景や、両社における株価の上昇度合いに大差がついた要因を探る。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)
大型買収が日立とパナの
安全性の水準を一時低下させた
前編では、日立製作所とパナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)の成長性分析を踏まえ、日立の事業ポートフォリオの変革(ノンコア〔非中核〕事業の売却とコア事業における買収)が売上高、営業利益※、総資産に対してどのような影響を与えたのか、そしてパナソニックHDにおける積極的な投資が、必ずしも売上高や営業利益に結びついていない点について解説してきた。
※今回は2社ともに、売上高(売上収益)から売上原価と販管費を差し引いて計算される、調整後営業利益を営業利益として表記している
ここからは、安全性分析、効率性分析、収益性分析を通じて、日立製作所のビジネスモデルがどう変わったのか、そしてパナソニックHDが大型リストラに踏み切った背景について見ていこう。
最初に、安全性指標から比較していく。
2社における流動比率(=流動資産÷流動負債)、固定比率(=固定資産÷純資産)、自己資本比率(=純資産÷総資本〔総資産〕)の推移を見てみたい。
まず、流動比率だ。
流動比率は、流動資産を流動負債で割ったもので、短期的に返済・支払いが必要な流動負債に対して支払いに充てられる流動資産がどれくらいあるのかを表す指標だ。これによれば、日立製作所では21年3月期から22年3月期にかけて、パナソニックHDでは22年3月期に流動比率が低下していることが読み取れる。
次に、固定比率を見てみよう。








