
生成AI活用が本格化する中、ライオンは100人の「AIエージェント開発者」育成を発表した。AIエージェントとは、生成AIと他のツールを連携することで、より複雑な目標達成を支援するアプリのこと。エンジニアだけでなく、一般社員もそうしたアプリを作れるようにする、そういう社員を増やす、という試みだ。現場を知る張本人が、本当に役立つAIエージェントを作るには何から始めればいいのか?2023年から今年にかけて、ライオンがどんな試行錯誤をしてきたか、詳しく聞いてみた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
使う人はどんどん使う、使わない人は全然…二極化する社内AI活用
ライオンが、2023年5月に社内生成AIサービス「LION AI Chat」をリリースしてから2年が経過した。デジタル戦略部を中心に機能開発や普及活動を進めた結果、現在では国内従業員5000人に対し、週2万回利用されるまでに普及している。
しかし、アクティブユーザーの比率を見ると、「ほぼ毎日使用している」と「週1~2回使用している」を合わせて約3割。「全く使ったことがない」が4割、「過去数回で諦めた」が2.5割と、かなり二極化していることが分かった(2025年3月時点)。
デジタル戦略部の百合祐樹氏は、「アクティブユーザーは想像よりも少なかった。2年間頑張ってこの状況なので、機能開発や普及活動以外のアプローチも必要だと感じた」と振り返る。

一方で、アクティブユーザーからは「もっとAIを活用したい」と、開発のリクエストが殺到するようになった。うれしい悲鳴ではあるものの、デジタル戦略部のリソースが逼迫(ひっぱく)し、推進のボトルネックになってしまう一歩手前まで来ていた。
百合氏らは発想を転換。デジタル戦略部が全ての開発を担うのではなく、各部門がそれぞれの課題に沿ったAIエージェントを自ら開発するアプローチ、いわゆる市民開発に舵を切った。
ノーコード・ローコードでAIアプリを開発できるプラットフォーム「Dify」を活用し、2025年末までに非エンジニアを含む100人の「AIエージェント開発者」を育成する集中教育プログラムを開始した。最初の公募で手を挙げたのは82人。機運の高さを物語っている。