
「わたし、怪談、よく知る」トキがヘブンに怪談を
住職を演じた伊武雅刀について、橋爪國臣CP(チーフプロデューサー)はこのように語っている。
「撮影現場で、伊武さんの語る怪談は、強さだけではなく、心の奥底に響いてくる悲しさや、美しさを感じました」
お祓いして怪談を聞いて、充実した足取りで帰宅するヘブンとトキと正木。
ヘブンは怪談に興奮したのか。ものすごく足が速い。
一方、トキは何か考え込んでいるような表情をしている。
ヘブンは帰宅するとすぐに奥の間(寝たり仕事したりする部屋)にこもり、襖(ふすま)をぴしゃりと閉めている。おそらく、いま体験したことを記録しているのだろう。
トキは深刻な顔で閉まった襖の前に座る。
「ヘブン先生」
「静かに」
案の定たしなめられるが、トキは続ける。
「怪談にご興味あるですか」
襖が開く。ヘブンが食いついた。
「ご興味をお持ちに?」とトキが聞き直すが、ヘブンは彼女の言葉の意味がわからない。
「怪談もっと聞きたいですか?」
「誰?」
「ヘブン先生が」
「ワタシモチロン カイダン スバラシイ」
そこでトキは得意そうな顔になる。
「私知っちょります」
「ようけようけ知っちょります」
いまこそ、自分が役立てるときが来たとトキは思っているようだ。
「好きです、大好きです」(怪談のこと)とアピールを続けると、ヘブンは奥の間に招く。
トキは敷居を跨いで中に入る。ここで敷居をまたぐ足元が強調される。
これまで何度も、この部屋には掃除や布団のあげさげで入っているとはいえ、主人と女中の関係であった。それがここではじめて、トキの固有の能力を求められて、この部屋に招かれたのだ。ある種、対等な関係。あるいはトキのほうがここでは上になったと言ってもいいかもしれない。
「カイダン ネガイマス」とヘブンは大興奮。
「わたし、怪談、よく知る」「10、20、30知る」とトキも高揚している。なにしろ、これまでは錦織(吉沢亮)のように英語は話せないし、リヨ(北香那)のように財力にものを言わせて寒さ対策もできずにいて、不甲斐ないと感じていたのだろう。ようやく役に立てると張り切っているのがよくわかる。
トキはフミ(池脇千鶴)に買ってもらった怪談の本を持ってきて、その中から好きな怪談を朗読しようとする。
ところが、ヘブンは「待つ待つ待つ」「本、見るいけません」と言い出した。Why?







