中国はなぜ「夢の地震予知」ができたのか?マグニチュード7.3の大地震から村人を救った技術者集団“2カ月の奮闘”写真はイメージです Photo:PIXTA

1975年2月4日、中国遼寧省でマグニチュード7.3の大地震が発生した。しかし、現地の村人たちは事前に避難を終えていた。中国はなぜ「夢の地震予知」を実現できたのか?わずかな異変を見逃さず地震予報につなげた、技術者集団・遼寧省冶金(やきん)地質調査公司102大隊の決死の2ヵ月に迫る。※本稿は、地球科学者の尾池和夫『活断層のリアル 京大元総長が語る入門講義』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

世界初の地震予知に
成功した中国遼寧省

 1975年2月4日、中国遼寧省にマグニチュード7.3の大地震が発生しました。

 この地震に際しては、世界で初めての、系統的かつ組織的な地震予報が段階的に出されました。地震の予報に成功して震災を大きく軽減するという歴史的な出来事でした。

 海城地震の短期予報と臨震予報の状況は、現地の取材などをもとにしたくわしい紹介が『中国の地震予知』(尾池和夫・NHKブックス・1978年)にあり、京都大学学術リポジトリに保存されていて、いつでも読むことができます。

 1974年12月22日に起った遼陽のマグニチュード4.8の地震を、国家地震局と遼寧省委員会とは非常に重要視しました。省の革命委員会(その頃の中国ではこれが役所に相当する)は緊急電話で各地に対して、緊急予防処置をとるよう通達を出し、「大地震、昼の地震、夜の地震に対して常に準備し、気をゆるめないよう」と指示しました。

 そして、1月4日に緊急の防災会議を開き、地震防災と救急活動のための任務分担と動員の計画をたてました。会議の後、各地では地震知識が、特に震災防止の面に重点をおいて宣伝されました。