以前は、おくすり手帳を持参した患者の医療費が高くなったり、おくすり手帳にかかる料金が薬局の規模によっては異なっていたりして、おくすり手帳を持参することにメリットを見いだせないような調剤報酬体系がとられていた時期もあった。

 だが、現在は、患者にとって不条理な仕組みは見直され、薬局の規模にかかわらず、同じ薬局を3カ月以内に利用した場合は、おくすり手帳を持参した方が患者の自己負担分は安くなるように見直されている。

 初めて行った薬局や、同じ薬局を3カ月を超えて利用した場合は、服薬管理指導料は安くはならないが、おくすり手帳を持っていっても医療費が高くなるわけではない。何よりも、おくすり手帳があったほうが、万一の健康被害を防ぐことができる。

 内閣府の世論調査「薬局の利用に関する世論調査」(2020年10月調査)によると、71.1%の人がおくすり手帳を「利用している」と答えている。

 おくすり手帳の利用は定着してきており、70歳以上の人は84.6%が利用している。ただし、18~29歳の人は59.2%、30~39歳の人は59.8%で、若い世代の利用率は6割程度にとどまっている。

「おくすり手帳」は1冊に情報をまとめよう
旅先で病気やケガをした時の助けにも

 薬は正しく飲めば、病気やケガの回復を助けてくれるが、用量や用法を間違えると、思わぬ健康被害を招くことがある。

 前述のように、おくすり手帳は、重複投与や相互作用による健康被害を防ぐためにつくられたもので、効果的に使うためには複数の医療機関から処方された薬の情報をまとめて記録しておくことが大切だ。

 そのため、おくすり手帳は何冊も持たずに、1冊だけにして、全ての情報をまとめるようにしておこう。処方薬だけではなく、ふだん飲んでいる市販薬やサプリメントの情報なども書き込んでおくと、薬剤師から服薬に関するアドバイスを受けることもできる。

 また、旅先で病気やケガをしたり、緊急搬送されたりした時も、おくすり手帳を携帯していると、ふだん服用している薬が分かり、安全で効果的な治療を受けやすくなる。

 公的医療保険の資格情報の方法は、マイナ保険証や資格確認書に見直されたが、どんな薬局に行く時も、おくすり手帳は変わらずに持っていくようにしたい。