大後前監督はこう話す。
「ここからは上りで遅れた選手がタイムを取り戻す、あるいは逆転するチャンスポイントです。上りでつくったタイムの借金を、ここで返せる選手が出てくるんです。
ただ、本来は上りも下りも得意な選手が5区で結果を残せるんですよ。城西大学の山本唯翔君(編集部注/2024年の第100回箱根駅伝で5区を走り、柏原竜二以来の2年連続の区間新記録を獲得し、金栗四三杯を受賞)は、そういうタイプでしたね。今後は上り坂だけというよりも、彼のようにバランス型の選手が結果も記録も残していくかもしれません」
芦ノ湖湖畔の駐車場で
幾多ものドラマが生まれた
右に精進湖を見て坂を下っていくと、最後に大きなカーブをいくつか経て、元箱根に降りていく。
眼下に芦ノ湖が見えたとき、選手はいったい何を思うのだろうか。高揚感か、安堵感か、それとも不甲斐なさか。
芦ノ湖の手前を左に曲がり、箱根神社の第一鳥居を越える。ここまで来るとホッとしそうだが、恩賜箱根公園に至るまでにアップダウンがあり、意外と長い。
恩賜箱根公園を越えて下っていくと、一気に視界が開ける。
下りの直線コースの沿道には多くのファンや大学関係者がおり、選手の背中を押してくれる。大声援のシャワーを浴びて、選手は右に折れ、芦ノ湖湖畔のゴールに向かっていく。
最後、選手は、どんな思いを抱えてテープを切るのだろうか。
箱根駅伝がない普段の芦ノ湖湖畔の駐車場は、山の呼吸のように静かだ。
だが、1月2日と3日は違う表情を見せる。
とりわけ往路のゴールはカオス状態になる。
『箱根5区』(佐藤 俊、徳間書店)
フィニッシュすると、笑顔の仲間に支えられて笑みを見せる選手。フラフラになって仲間に抱きかかえられる選手。自分の仕事をやりきったと安堵の表情を見せる選手。
いろいろな表情と感情が混在し、独特の空気が漂う。勝ったチーム以外はチームごとに集合し、簡単な反省会が始まる。それを心配そうに見守る関係者やファン、家族。
レースが終わったあとも、ここではまだドラマが続いているのだ。







