様子を心配して見にきた佐藤監督代行から、

「いやーおまえ、77分台出ちゃったよ。びっくりだよ」

 と言われ、それを聞いたとき、「ああ良かった」と嬉しさがこみ上げてきた。

「やったと思いましたね。でも、この結果で、自分が今井さん(編集部注/順天堂大学の「初代・山の神」今井正人。2005年の第81回箱根駅伝で5区を走り、史上最多の11人抜きを達成。第83回大会の5区では区間賞で往路優勝に導き、この走りを高校2年時に見た柏原は今井に憧れ、箱根の5区を走ることが目標になる)を超えたという意識はなかったです。今井さんと一緒に走っていたら、どういうことが起こったんだろうって思いましたが。ただ、今井さんが見ていた景色を見ることができたのは嬉しかった。こういうことだったのかと思いました」

【箱根駅伝】「3位でいい?冗談じゃない」…“山の神”柏原竜二が監督にカチン、返した“ひと言”にグッときた『箱根5区』(佐藤 俊、徳間書店)

 ひとつひとつのシーンは、あまり覚えていなかった。鮮明に残っているのは、小田原中継所だけだった。思い返せばレースは、すべて苦しかった。宮ノ下から小涌園までの坂を始め、最高到達地点からの下りなど、苦しくないシーンはひとつもなかった。

「突っ込んで入ったまま最後まで行ったので、本当にきつかった。でも、優勝できて良かったです。それで報われたと思いました。1年目は、実力というよりいろんな運が重なって勝てたんだと思います。ただ、あえてひとつ結果を出せた要因があるとすれば、5区を走った誰よりも勝ちたいという気持ちが強かった。それは自信をもって言えます」

 初めての箱根駅伝で、柏原は区間新記録で総合優勝(編集部注/67回目の出場にして初の総合優勝で、箱根駅伝史上最も遅い回数での初優勝記録)に貢献した。