高瀬は、猛烈な走りでトップの早稲田大学の三輪真之に追いついた。

 だが、その後、三輪に離されて一気に落ちていった。高瀬のまさかのブレーキ(区間22位)が、柏原にとっては良い意味での誤算になった。

「高瀬さんは2年目なので、ジンクスに自分を当てはめてしまったのかなと思います。一度、山を走った選手は、『次どうしよう』『どうやって山を攻略しよう』って考えるんです。でも、そうじゃないんですよ。

 山で結果を出すには、山だけじゃなく、全部をパワーアップしないといけないんです。それは、2年目のジンクスからいかに逃れるかというテーマの答えと同じで、シンプルにトラックも坂もがんばってパフォーマンスを上げていくしかない。山を走ることを複雑怪奇に考える必要はないんです」

 柏原は、そのために「練習が大事だ」と言う。

 ケガをせず、1日1日のトレーニングをしっかりこなす。ただ、与えられたものをやるだけではなく、これはなんのためにやるのか、自分の頭で考えてやっていく。

「考えないと成長しません。よく、10000メートル10本とか、1本目から9本目までペースを刻んで進めたあと、最後の1本とか、ラスト400メートルとか、上げて飛ばす人がいますけど、僕はそういうのが大嫌いです。

 ラストだけ上げるとアドレナリンが出て、出しきったとか、やりきったと感じて、その感覚だけで満足して終わってしまうんです。最後にフリーで出しきる練習ならいいですけど、そうではなく1本目から9本目まで余裕があって、最後の10本目だけ出しきるのは違う。だったら最初から全体のペースを上げて、パフォーマンスを高めていったほうがいい」

頭脳派の早稲田の選手に
巧みな駆け引きを仕掛ける

 高瀬に並ばれた三輪は、「プランどおりだった」と柏原は見ていた。追いつかれることをイメージをしていたので、それまで力を使わずに、追いつかれても引き離されないことを重視していた。

 一方、高瀬は三輪に追いつくまでにかなり力を使っていた。

「並んでから突き放していく。早稲田の戦略勝ちというか、さすが早稲田は賢いなと思いましたね」